君の生きた証~love in war~

ルームメイトと、恋の相手が重なってしまった。

でも、勝つのは俺だと思っていた。



いつだって、女が切れたことはなくて、地味なアレンとは違うんだと勝手に優越感を感じていた。



なのに・・・
『ロルフ!』

『どーしたアレン、機嫌いーな?』

『ナタリーに告白したんだ』

『え・・・』



消極的なアレンが自分から告白なんてと思った。



『で・・・結果は・・・』

『OKだって!もう嬉しくってさぁ!』



満面の笑みのアレンに、もう何も言えなかった。


俺も好きだった、なんて。

本気だったんだ、なんて。



格好悪くて言えなかった。
「・・・忘れてあげるわ」


震え声でナタリーが言った。



「それが一番よ・・・私にはアレンがいて、あなたにはパトリシアがいるわ」

「それを捨ててでも、お前がほしいんだ・・・!」

「許されるわけがないわ。私はアレンを愛して・・・」

「あいつが・・・!」



俺は・・・


最低な言葉を吐いた。






「あいつの親が・・・この国に銃を向けたとしてもか・・・!」
頭の中が真っ白だった。



やわらかで、でも、苦いキス。


煙草の味だろうか。

苦くて、大人びた味だった。


生々しいほどの温度が唇から全身に広がった。
ロルフが・・・私を好き・・・?

ずっと前から・・・?




そんな・・・


じゃあ、あの日々は嘘になるの?

4人で一緒に街へ出かけ、カフェでお茶を飲んだあの日々は・・・全て嘘なの?

4人で休み時間に廊下ではしゃいだ記憶は・・・全てまやかしなの?




ねぇ・・・
「それ・・・どういう意味・・・?」



もう一つの衝撃が、ぐわんと耳の奥で揺れている。



「アレンの親が・・・私たちに銃を向けた・・・?」
「あぁ、そうさ。アレンの父親は敵国の将軍だ。それも対外敵特別隊を編成した張本人」

「たいがいてき・・・とくべつたい・・・」

「国外の敵と戦う部隊だ・・・今も、すぐ壁の外で軍を指揮してる」

「そんな・・・」



アレンは何も言わなかった。

家のこと、故郷のこと、家族のこと・・・


それは・・・隠していたからなの・・・?
「遺体回収の時・・・死にかけた兵士がいた」

「兵士・・・」

「敵軍の若い兵士だった。そいつを見てた壮年の男がいた」



ロルフのはしばみ色の目が遠くを見つめるように揺らぐ。



「兵士は、その男を指さして、『ジョーンズ司令万歳』と」

「ジョーンズ・・・」

「男は、茶色の短髪で、鋭い緑の目をしてた・・・」

「それは・・・」

「アレンと同じだ」
私は、アレンの姿を思い出していた。



少し長めの濃い茶色の髪。

切れ長だが、目尻の下がった優しい緑色の瞳。

すっと通った鼻梁。

細い輪郭線。

へらりと笑う口元。

薄い唇のその温度さえ・・・今は、なぜか記憶から遠のいている。