「・・・あぁ」
「嘘・・・なんで・・・」
「っ・・・、好きだからだよ・・・!」
死ぬなら、逝くなら、消えてしまうなら、全て吐いてからがいい。
「ずっと前から好きだったんだ・・・」
「そんな・・・だって、ロルフはパトリシアと・・・」
「違う」
「違わないわ。2人は幸せだったでしょう?それをどうして・・・」
「違う、みんな嘘だ・・・!」
偽り続けた代償が支払われていく。
「ずっと好きだったのは・・・ナタリーだけだ」
ルームメイトと、恋の相手が重なってしまった。
でも、勝つのは俺だと思っていた。
いつだって、女が切れたことはなくて、地味なアレンとは違うんだと勝手に優越感を感じていた。
なのに・・・
『ロルフ!』
『どーしたアレン、機嫌いーな?』
『ナタリーに告白したんだ』
『え・・・』
消極的なアレンが自分から告白なんてと思った。
『で・・・結果は・・・』
『OKだって!もう嬉しくってさぁ!』
満面の笑みのアレンに、もう何も言えなかった。
俺も好きだった、なんて。
本気だったんだ、なんて。
格好悪くて言えなかった。
「・・・忘れてあげるわ」
震え声でナタリーが言った。
「それが一番よ・・・私にはアレンがいて、あなたにはパトリシアがいるわ」
「それを捨ててでも、お前がほしいんだ・・・!」
「許されるわけがないわ。私はアレンを愛して・・・」
「あいつが・・・!」
俺は・・・
最低な言葉を吐いた。
「あいつの親が・・・この国に銃を向けたとしてもか・・・!」
頭の中が真っ白だった。
やわらかで、でも、苦いキス。
煙草の味だろうか。
苦くて、大人びた味だった。
生々しいほどの温度が唇から全身に広がった。
ロルフが・・・私を好き・・・?
ずっと前から・・・?
そんな・・・
じゃあ、あの日々は嘘になるの?
4人で一緒に街へ出かけ、カフェでお茶を飲んだあの日々は・・・全て嘘なの?
4人で休み時間に廊下ではしゃいだ記憶は・・・全てまやかしなの?
ねぇ・・・
「それ・・・どういう意味・・・?」
もう一つの衝撃が、ぐわんと耳の奥で揺れている。
「アレンの親が・・・私たちに銃を向けた・・・?」
「あぁ、そうさ。アレンの父親は敵国の将軍だ。それも対外敵特別隊を編成した張本人」
「たいがいてき・・・とくべつたい・・・」
「国外の敵と戦う部隊だ・・・今も、すぐ壁の外で軍を指揮してる」
「そんな・・・」
アレンは何も言わなかった。
家のこと、故郷のこと、家族のこと・・・
それは・・・隠していたからなの・・・?