「父さん・・・」
ナタリーや、アグネス、ノエラたちと食事を作ろうとしたとき、また襲撃が来た。
悲鳴、泣き叫ぶ声、友達や恋人を呼ぶ慟哭・・・
建物にも響いてくる衝撃に耐えながら、私たちは震えていた。
数十分の戦闘の後、銃声がやんだ。
早いな、と思った。
戦争は、こんなに簡単に決着がつくほど単純ではない。
いや、双方に圧倒的な軍力の差があれば・・・
ましてや、学生と正規の軍人の戦いなど・・・
考えて、怖くなる。
まさか・・・負けた?
いや、そんなまさか・・・
ロルフも・・・?
死んだ・・・と?
頭を必死に振り、その考えを追い払う。
ダメだ。
彼を信じなければ。
「帰ってきたわ・・・っ!」
アグネスが唐突に叫んだ。
「負傷者多数!」
「おい、道をあけろ!」
「死ぬなよ、着いたぞ!」
そんな声も同時に響いてきた。
「アレン!」
真っ先に叫んだのは、ナタリーだった。
青ざめた顔でロルフに支えられるアレンがいた。
ケガでもしているのだろうか。
ロルフ自身も、ひどく顔色が悪い。
「ナタ・・・リー・・・」
「アレン、よかった・・・本当に・・・よかったわ・・・」
すがりつくように泣くナタリーには、学園トップの秀才の面影はなかった。
「パトリシア・・・」
「何、ロルフ・・・」
「みんなに、食事を出してくれるか?」
「え・・・あ、そうね、そうするわ」
「悪いな」
こんな時でさえ、真っ直ぐな眼差しで周囲を気に懸けるロルフが好きだった。
煙草だろうがお酒だろうが、悪いことに手を出すのは大好きで。
いつだって、女の子たちに囲まれていて。
バスケだって、誰よりも達者で。
性格に似合わず、字が綺麗で。
そんなロルフが好きだった。
友達のナタリーとアレンが付き合いだして、私たちの距離も縮まった。
同じクラスだったから、なおのこと。
『俺と付き合わねぇ?』
そう言われたときには、もう私はあなたに恋をしてて。