「おい・・・アレンどうした?」
ロルフが不審そうにこちらを伺う。
「なんか・・・真っ青だぜ、お前」
真っ青?
あぁ・・・分かるよ・・・さぞひどい顔色だろうな・・・
血の気が引いていくのが分かる。
「おい!アレン!」
足ががくんと折れた。
だって・・・
すぐそこに・・・
「父さん・・・」
ナタリーや、アグネス、ノエラたちと食事を作ろうとしたとき、また襲撃が来た。
悲鳴、泣き叫ぶ声、友達や恋人を呼ぶ慟哭・・・
建物にも響いてくる衝撃に耐えながら、私たちは震えていた。
数十分の戦闘の後、銃声がやんだ。
早いな、と思った。
戦争は、こんなに簡単に決着がつくほど単純ではない。
いや、双方に圧倒的な軍力の差があれば・・・
ましてや、学生と正規の軍人の戦いなど・・・
考えて、怖くなる。
まさか・・・負けた?
いや、そんなまさか・・・
ロルフも・・・?
死んだ・・・と?
頭を必死に振り、その考えを追い払う。
ダメだ。
彼を信じなければ。
「帰ってきたわ・・・っ!」
アグネスが唐突に叫んだ。
「負傷者多数!」
「おい、道をあけろ!」
「死ぬなよ、着いたぞ!」
そんな声も同時に響いてきた。
「アレン!」
真っ先に叫んだのは、ナタリーだった。
青ざめた顔でロルフに支えられるアレンがいた。
ケガでもしているのだろうか。
ロルフ自身も、ひどく顔色が悪い。
「ナタ・・・リー・・・」
「アレン、よかった・・・本当に・・・よかったわ・・・」
すがりつくように泣くナタリーには、学園トップの秀才の面影はなかった。
「パトリシア・・・」
「何、ロルフ・・・」
「みんなに、食事を出してくれるか?」
「え・・・あ、そうね、そうするわ」
「悪いな」
こんな時でさえ、真っ直ぐな眼差しで周囲を気に懸けるロルフが好きだった。