君の生きた証~love in war~

アレンは、わずかに迷いを見せながらもうなずいた。



「おい、エミール、ロルフ、ダニエル、行こうぜ」


アレンが、こちらを見ないまま歩き出す。

いつもは、ナタリーがいれば、何だって一番の優先順位なのに。



「あ、アレン、何を・・・」

「バカ、戦いに備えるぞ」



いつものアレンらしくない声で、背中が遠ざかっていった。
「おい、アレン!」



思わず呼びかけた。



「・・・何だ?」

「お前本当に・・・いいのか?」
だって・・・お前は・・・



「お前が守るべきものは・・・」




いくら迷いなく歩いているように見せたって、本当は違うだろ?
「あのさ・・・ロルフ」

「何だ?」

「・・・黙っててくれるか?」


倉庫へと足早に向かうアレンが、静かに振り返った。

底知れぬ深い闇がアレンの瞳に浮かんでいる。




こんな目のアレンは初めてだった。




いや、もともとアレンは、厳しい顔つきをしている。

ナタリーには穏やかな眼差ししか向けないが、いつもはきつい目つきだ。



テニスの試合の時しかり。

勉強中しかり。



生真面目な性格を反映したような鋭い緑の目は、いつもぎらついている。

人を殺しそうな顔してる、と言ったのは、クラスメイトだったっけか。



とがり気味の顎や、きりりとした眉が、一層その印象をきつくしている。






ナタリーのクラスメイトであるチャールズは、「目が合っただけで殺されそうだ」とアレンのことを噂していた。


テニスの練習をさぼって、アレンに厳しく怒られた後輩は、いまだにアレンと口をきくのが苦手だという。




俺自身、ルームメイトになったときは、こんな怖い顔をしたヤツと一緒にやっていけるだろうかと本気で不安になった。




そう、根本的な部分で、アレンは殺気立った人間なのだ。

その視線を向けられて、鳥肌が立った。





言ってはならない。

触れてはならない。



そういう真実が、この世にはあるのだ。




忘れていた・・・


俺も同じなのに。

「うわ・・・これだけの銃を・・・」


ダニエルが声を上げた。


確かに、倉庫の中にはあふれんばかりの銃と弾が備えられていた。



「アレン、よく知ってたな」
「あぁ・・・最近、ヘンリー先生に言われて、大きな荷物運ばされたから」

「それで・・・銃があるって?」

「この不穏な時期に、焦って少人数で運ぶものっつったら・・・なぁ」



自嘲するようにアレンが笑った。

ひどく苦い笑顔だった。
「あぁ・・・しっかり手入れされてらぁ」


アレンは、慣れた手つきで銃の装備を確かめていく。


それを見て、俺は自分の疑念が濃くなっていくのを感じた。