「ロルフ・・・上に上がらないの?」
「あ・・・あぁ、ちょっとすることが出来てさ」
ロルフは、はしばみ色の瞳をすっと細め、おやすみと言った。
・・・あぁ。
こんな日は、ひどく悲しくなってしまう。
ロルフは、いつも私ではない誰かを見ているようだ。
遠い、遠い誰か。
以前、交際していたドロテアでもない。
火遊びするようにイチャつくエレノアでもない。
クラスでも仲のいいミランダ?
それとも同じバスケ部のクロディーヌ?
違う。
そうじゃない・・・もっと違う誰か。
それがどうしても分からなくて・・・
私はいつも切なくなる。
好きになったのは、私からだった。
そんな負い目からだろうか。
こんな気持ちになるのは・・・
「ゆっくり・・・寝ろよ」
私の額に口づけて、ロルフは闇に包まれた校舎の中を歩き出した。
ロルフ・・・あなたは、何を隠しているの?
何を抱えているの?
それは、私では支えきれないものなの?
ねぇ・・・教えてよ。
こんな夜だからだろうか。
今夜は、問いかけが胸からあふれ出す。
私は、疑念が声にならないようにと、唇を引き結んだ。
俺が向かったのは、2階の図書室だった。
見たいものがあった。
確かめて、・・・それが真実であったら、今のままではいられない。
何かが崩れる。
何かが壊れる。
その何かは、おそらく二度と取り戻せない。
沈黙が支配する図書室の扉を開いた。
分かってる。
誰かが傷つくことも。
こんな疑いを抱くことすら、裏切りであることも。
それでも・・・
俺が確かめなければいけない。