君の生きた証~love in war~

「パトリシア、アレンを見なかったか?」


遺体回収から戻ったロルフが訊ねてきた。


「さぁ・・・」

「ナタリーと一緒に校舎に入っていったわ。もう寝るんじゃない?」



さすがに、今日は消耗した。

少しでも眠って身体を休めなければ。



「そう・・・か・・・」

「私も寝るわ。・・・もう、身体が限界に来てる」

ロルフもまた、疲れた表情をしていた。


助かってよかった。

生きていられてよかった。



でも、ただそれだけに歓喜するには、あまりに多くを失いすぎた。
「ロルフ・・・上に上がらないの?」

「あ・・・あぁ、ちょっとすることが出来てさ」



ロルフは、はしばみ色の瞳をすっと細め、おやすみと言った。





・・・あぁ。

こんな日は、ひどく悲しくなってしまう。
ロルフは、いつも私ではない誰かを見ているようだ。


遠い、遠い誰か。



以前、交際していたドロテアでもない。

火遊びするようにイチャつくエレノアでもない。

クラスでも仲のいいミランダ?

それとも同じバスケ部のクロディーヌ?



違う。

そうじゃない・・・もっと違う誰か。
それがどうしても分からなくて・・・

私はいつも切なくなる。


好きになったのは、私からだった。



そんな負い目からだろうか。



こんな気持ちになるのは・・・
「ゆっくり・・・寝ろよ」


私の額に口づけて、ロルフは闇に包まれた校舎の中を歩き出した。





ロルフ・・・あなたは、何を隠しているの?
何を抱えているの?

それは、私では支えきれないものなの?

ねぇ・・・教えてよ。



こんな夜だからだろうか。

今夜は、問いかけが胸からあふれ出す。



私は、疑念が声にならないようにと、唇を引き結んだ。
俺が向かったのは、2階の図書室だった。



見たいものがあった。
確かめて、・・・それが真実であったら、今のままではいられない。


何かが崩れる。

何かが壊れる。



その何かは、おそらく二度と取り戻せない。