「それでも・・・私はあなたが好きよ」
そう言って、ナタリーは、健気に微笑んだ。
罪悪感が胸をつく。
まだ伝えきれていない。
まだ告げられていない。
まだ俺は真実を隠している。
出来ることなら隠し通したい。
君に知られることなく生きていきたい。
ただまっさらな未来だけを夢見ていたい。
でも・・・それが叶わないのなら・・・
闇にほの暗く浮かぶのは、恋人のなめらかな金色の髪。
愛しい人の真っ直ぐな青い眼差し。
俺は、迷いの揺れる自分を抱えていた。
ある人のことを考えながら・・・
私は、自分を勝ち気だと思っていた。
どんなことにもめげない強い人間だと思っていた。
でも、違った。
本当の自分は、情けないほど弱かった。
新聞部のミルドレッドが死んだ。
同じクラスのジェシイが死んだ。
中学生時代から親しかったパーシーが死んだ。
失ったものは、あまりに重く。
心の深いところにのしかかる。
「パトリシア、アレンを見なかったか?」
遺体回収から戻ったロルフが訊ねてきた。
「さぁ・・・」
「ナタリーと一緒に校舎に入っていったわ。もう寝るんじゃない?」
さすがに、今日は消耗した。
少しでも眠って身体を休めなければ。
「そう・・・か・・・」
「私も寝るわ。・・・もう、身体が限界に来てる」
ロルフもまた、疲れた表情をしていた。
助かってよかった。
生きていられてよかった。
でも、ただそれだけに歓喜するには、あまりに多くを失いすぎた。
「ロルフ・・・上に上がらないの?」
「あ・・・あぁ、ちょっとすることが出来てさ」
ロルフは、はしばみ色の瞳をすっと細め、おやすみと言った。
・・・あぁ。
こんな日は、ひどく悲しくなってしまう。