日射しが照りつけ、温かな空間に、むせ返るような蜜の香り。

これのどこが望んだ世界だ。


「…アホ羊。あんた、あたしの嫌いなもの知ってる?」

「?」


羊は首をかしげる。

それを嘲笑するかのように鼻を鳴らした美琴は、温室に目を移して口を開いた。


「こんな明るい温かな世界、あたしは望んじゃいない。むしろ不快だ。
こんな眩しい世界なら、いっそ死んだ方がマシかもね」

「……。」

「早く家に帰して」

「……。」

「おい…、アホ羊聞いてん「わかった。世界を渡ろう。ミコト、ミコト。ミコトの望む、その世界へ」

「は?」


また今度も、抵抗する暇などなかった。

ただ目映いばかりの光に照りつけられ、美琴は強く目を瞑った。


同じく眩しさに目を瞑った少年が目を開いたとき、

「あれ…?」

そこには誰もいなかったという。