憤慨する美琴に恐縮したのか、少年は羊を抱き締めたままぷるぷると体を震わせる。
「え、えっと、羊さん苛めちゃダメですよ…?」
「むしろあたしが苛められてると思うんだけど」
「ミコト、ウソだめ。ウソだめ」
「(死ねばいいのに)」
冷めた目で羊を睨む美琴にも容赦なく。
羊は懐中時計をかかげてコテンと首をかしげた。
「ミコト、ミコト。望んだ世界。君の望んだ世界に来たよ」
「は?何言ってんのアホ羊。あたしが望んだ?ここに来ることを?」
「望んだ、望んだ」
ここはミコトの望んだ世界。
そう繰り返す羊に、馬鹿じゃないのかと美琴は大きく溜め息をついた。