そんな美琴の心情もいざ知らず。
少年は美琴の近くにいた羊に目を向けた。
その途端、少年の目がキラキラと輝く。
「かっ…、可愛いーっ!うわあっ羊だあ!可愛いなあ、可愛いなあ。モフモフしてる~。ふわわ~、可愛いぃぃ~!」
「メェ~」
「かーわーいーいー!」
「……。」
きゃーきゃーと羊相手に頬を染める少年。
待ってどうしよう女子力も高いよこの少年。え、あたしより女の子らしいってどーゆーことだテメェ。
あんぐりと口を開ける美琴など目に入らず。少年は羊を愛でる、愛でまくる。
「…って、おいこら馬鹿ヒツジぃいっ!あんたあたしの時と態度違うじゃん!なーにが『メェ~』よっ、羊のくせに猫かぶりすんなッ!」
「ミコト、落ち着いて。はしたない、はしたない」
「死ねッ!」
なぜ羊にたしなめられなければいかんのだ。
盛大な舌打ちをかまし、美琴は目を吊り上げた。