「朱綾」





 愛しい声。あぁ、いつもの優しい彼の声だ。






 後ろから聞こえたその声が、また涙を誘う。




 ゆっくりと振り向くと、目を細めてふわりと微笑む彼がいた。








「咲久…!!」







 顔を見た瞬間、ギュッと咲久に抱きついた。会いたかった。そう伝えるように。





 咲久の腕には傷ができていて、痛々しかった。



「大丈夫…?」


「全然。痛くも痒くもないよ」