「入学祝いに、何か買ってあげましょうか。ね?お父さん」
皿洗いが終わったのか、クルッとこちらを向いてニコッと笑顔を作りながら母が言った。
「そうだな。買ってやるか」
「え、ちょ…!私、そこまで子供じゃないんだから。いいよ、買わなくて」
「美藍?こういう時は、甘えとくものよ?フフ」
「……もー、しょうがないなぁ。買わせてあげるよ」
「可愛くないわねぇ、ホント。美藍は」
その日、美橙は倉庫に行っていて家にはいなかった。
今思えば、私があぁ言わなければ…、幸せだったのかもしれないのに。
タイムマシンが欲しいと、本気で思ってる自分がいることに思わず自嘲的に笑ってしまう。