1944.04.11
私、木戸桜(きど さくら)はこの日をもって16歳の誕生日を迎えた。
らしい。
というのも私自身が忙しすぎて誕生日を忘れていたからだ。
幼い頃はあれだけ楽しみだったのに、そう思うと一人でも笑いが込み上げてくる。
窓から見える日に染まった海を眺めていると、ドアをノックする音が聞こえた。
「…誰だ」
「少佐!僕です!石原です!」
元気のいい明るい声がドアの外から聞こえる。部下の石原一樹(いしはら かずき)だった。
私が一言、入れと声をかけると、まるで犬のように素早くドアから入り近寄ってきた。