フェンスに手をかけてガン見してしまう私は、もしかしたら変態かもしれない…
てか、変な人だよね、確実に。
そう思いながらも見てしまう私は末期なのかもしれない。
川原(カワハラ)皐月先輩。
3年生でサッカー部のキャプテンらしい。
かっこ良くて、優しくて、運動も勉強もできる先輩に憧れと恋心を抱く私。
「実奈美じゃん。何してんの?」
フェンスに手をかけながら少し俯いていれば、大好きな声が耳に入った。
「皐月先輩…」
キラキラと眩しい笑顔を向けられて、軽く死ねそう。
「もう練習終わるから、一緒に帰ろうぜ!!」
「あ、はい…」
「じゃあ、そこで待ってて!!」
カッコイイ笑顔を残してその場を去った皐月先輩の背中がひどく愛おしい。
先輩との出会いは中学校1年生の春。
新入生歓迎会の時、壇上で代表生徒としてお祝いの言葉を読んでいた先輩に一目惚れした。
ちなみに、これが私の初恋。
その後当時先輩はテニス部に所属していて…それを追いかけるように私もテニス部に入った。
もちろん先輩目当てでテニス部に入部した子は少なくもなく。
ライバルだらけの中、女の勝負なんてものに入れやしなかった私は、会話はともかく、陰で先輩を見ていることしかできなかった。
先輩が卒業してからは、連絡先なんて知らなかった私と先輩を繋ぐものなんてなく…
先輩がどこの高校に行って、何をしているのか。
それさえも知らなかった。
3ヶ月ほど前、入学式で新入生の案内係だった先輩と偶然再会して…
今に至る。
中途半端に終わっていたはずの恋が、先輩と再会したことで、恋も再開したと言いますか…
まあ、いわば私の恋はストーカー並みにキモいかもと思われるほどのものなのだ。
なんて言っても…
私の恋なんてすでに失恋している。
「実奈美、お待たせ!!」
「あ、はい。」