康太と由佳に叱咤激励されながら練習に励んだ結果、私は無事に伴奏者として3送会を迎えることが出来た。
その日の放課後に私は由佳からある事をうちあけられた。
「私ね、明日、盛岡に行くの。」
「え?」
まさに突然だった。
幼稚園からずっと一緒で、仲良しで、大好きで離れ離れになるなんて想像したことすらなかったのに。
離れるどころか、来年の今頃二人で3送会や卒業式を迎えて、中学を巣立っていく姿すら想像していたのに目の前の現実は衝撃的すぎた。
「あのね、美穂。」
由佳は呆然とする私に遠慮するように話を続けた。
「最後に音楽室に行こう。」
由佳に連れられて私は音楽室へ行った。
「美穂、プレゼント頂戴。最後に美穂のピアノ聞きたいな。」
「いいよ。倉田未央が滑った愛の夢でも弾くよ。」
弾き終わると由佳はうっすらと目に涙を浮かべていた。
「ありがとう。明日、見送りに来てくれる?」
「もちろんだよ、行かないわけないじゃん。」
「じゃあ、うちからも最後のプレゼント。」
「え?」
「ここで待ってて。私はもう行くね。また明日。」
そう言うと、由佳は音楽室を出た。
そしてしばらくして、ドアが開いた。
「遅くなったな。プレゼントだ。」