「由佳、昨日はごめんね。」

次の日の練習後、私は真っ先に由佳に謝った。

「大丈夫だよ、大丈夫。それより、伴奏者復帰おめでとう!」
「ありがとう!由佳のお陰だよ。」
「感謝したまえ~!」

そんな風に暫く笑い合った後、また由佳は1人で先に帰っていってしまった。

仕方なく1人で教室へ行って帰り支度をしていると、また康太が入ってきた。

「今日も一人か?」
「うん。」
「お前、もう帰るのか?」
「そうだよ。なんで?」
「いや…」

康太はまだ何か言いたそうに見えたが、なにも言わずに口ごもってしまった。そして、しばらくの沈黙のあとやっと、

「なんでもない。俺は部活だからまたな。」

とだけ言って教室を出ていってしまった。

正直言って、私は何故最近帰りに由佳に置いていかれるのかが気になって仕方がなかった。
そこへきて、今度は康太が毎日放課後に話に来るようになり、私の中にはなんとも言えない違和感が膨らみ始めていた。

とはいえ、今は伴奏に集中したいと思い、誰にもその違和感を打ち明けてはいなかった。

ようやく取り戻した伴奏者のポジションを、もう1年生の江奈には渡したくないから余計なことは考えずにいようと決意をしたのだ。