由佳との電話を終えた私は、また楽譜を持ってピアノへ向かった。この曲は難しいけど、3送会で伴奏が出来るのは私しかいない。

「ふな、ちょっと待っててね。」

私の足に甘えてすり寄ってくるふなを少し離れたソファーの上へと連れていった。

ヘッドホンを付けてピアノを弾き始めるけど、なかなか滑らかにメロディーを刻めない。楽譜も読み間違いばかりで、私はいつになくピアノを練習することに苛立ちを覚えていた。

「美穂、もう寝なさい。いくらヘッドホンをしていても、音が漏れたりしたら大変よ。パパも明日は早いみたいだし…。」

気が付くともう時計の針は11時を回っていた。

私に話し掛けるママに、

「じゃあ今日の練習の成果聞いて。」

とさっき外したばかりのヘッドホンを渡す。

「どう、ママ?」
「貴方にしては難しい曲ね。でも、だいぶ弾けているわ。毎日練習すればもっと良くなるわね。」

音楽大学出身のママに誉められて、私は明日の合唱練習も上手く行きそうな気がした。

寝るときはふなも一緒に部屋へ連れていった。一緒に寝てくれるか心配だったけど、ふなもすぐに布団に入ってくれた。

私は、明日行われる初めての合唱練習が楽しみでなんだかドキドキした。上手く伴奏が出来るか不安も感じながら、いつの間にか眠りに着いた。