いよいよ由佳が盛岡に行く。

昨日の引っ越しの話と康太からの告白、そのどちらもまだ実感がないまま、私は由佳の見送りのために駅に来ていた。

三陸鉄道南リアス線ー。

いつもは大好きな列車が、今日は少し恨めしく思えた。

「美穂、プレゼントはどうだった?」
「驚いたよ…。」
「幸せになるんだぞ!」
「由佳、ありがとう。一生友達だよ!」

短い会話もそこそこに、遠くから列車の音が聞こえてきた。

「美穂ちゃん、ありがとうね。由佳と仲良くしてくれて、本当にありがとう。」

由佳のママが泣きながら私の手を握る。由佳も泣きながら私の頭を撫でた。

「母ちゃんも由佳も、たかが盛岡に行くだけだべ。泣くな。また会えるんだから。」

そう言いながら、由佳のパパも泣いていた。

「じゃあ、桜井さんお元気で。娘がお世話になりました。」
「こちらこそありがとうございました。田崎さんもお元気で。」

由佳のパパと私のパパが挨拶をした。
ママたちは泣きながら握手をして、私と由佳にも挨拶をするようにいった。

「またね、美穂!ジュテーム!」
「ジュテーム!そして、アデュウ!」

何かのアニメでやっていた、フランス語の台詞で別れた。

“愛してる。そして、さようなら。”

恋人でもないのに、とお互いにおかしくなって、列車のドアが閉まるまで笑いあった。