いきなり、雨が体に落ちてこなくなった。
真上を見ると、紺色の傘。

後ろを振り向くと、見慣れた人物が立っていた。

「お、お前何やってんだよ!?」
心配そうな目が私を捕らえる。

「達川くん・・・。」

「とにかく傘に入れ!びしょ濡れじゃんか!?」

「ん・・・。」
私が短い返事をすると、不器用にエナメルバックからタオルを渡してきた。

「拭けよ。風邪引いたらどうする。」

タオル・・・。

私はそのタオルをずっと見つめていたのだ。


前にも、佐倉くんからこんなことあったなぁ。


「ふふ、ありがとう。達川くん。タオルはいらない、家近いから。」

そう言って、少し笑ってみせた。

「作り笑い。」



「え・・・何?」
私は息を呑んだ。