「結実ー、雨が降り出したかも。」

その一言で私は現実に戻った。

今から下校。
今日は中教研だから、由葵の部活も休みらしい。

久しぶりにふたりで帰る。
そればっかりが嬉しくて、つい顔がほころぶ。


やっぱり過去のことばっかり考えるのは、良くないよね。


「え、由葵・・・雨、降ってるの?」

「うん、そうだけどー?」

「あーんっ!傘忘れたかも。」

「しょーがないなぁ、結実ったら。傘、いれたげる。」

「由葵ありがとーーっ!あ、私が持つよー。」

ぽつぽつと地面に落ちる雨はしっとりして爽やかなにおいがした。