すごく怖い夢を見た。
もぅ二度とバスケができない夢を見た
皆は走ってて、私はその場から動けない
まるで、そこから動くことを許されないかのように。

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『はっ…あ…はぁ…』
起きたら見知らぬ天井があった
すごく清潔感のある綺麗な天井
ここは?
「あっ、気づいたのね桃愛」
目の前にはお母さんの顔があった
『おかあ…さん?』
まだ意識がはっきりできていない
『ねぇ、私…どうしたの?何があったの?私』
お母さんは顔を曇らせた
どうしたの、お母さん。
「…靱帯を切ったのよ」
え…。
じん…たい?
「普通なら2ヶ月もすれば良くなるんだけど、あなたの場合は…半年かかるらしいのよ」
お母さんが私の目を見ずに話す
私は…バスケが半年できない?
いや、もしかするとこの先も…?
仮に半年で良くなったとしてもスタメン入りはまず無理
『そん…な…』
自然と涙が頬を伝った
私のこのバスケ生活はこんな簡単に終わってしまうの?
涙を止めようにも止められない
『や…だ…』
「お母さんが代わってあげれたら…」
今の私にはお母さんのその言葉すらも同情にしか聞こえなかった
『お母さんに何がわかるの?私にはバスケが生きがいだった…』
涙の量が増していく
バスケのない生活が頭をよぎる
毎日がつまらなくて、抜け殻みたいになりそう。
『もぅ、帰って…』
お母さんの顔が見れなかった
「桃愛…」
『帰って!!』
お母さんは泣きながら病室を出て行った
お母さんには本当にひどいことをしたと思ってる
八つ当たりだってことも…
でも今の私は1人になりたかったの。
ごめんなさい。

しばらく経って医者が来た

「具合はどうだい?」
『…変わりありません』
医者と目を合わせられない
合わせたらきっと八つ当たってしまう
「明日には退院できるからね。しばらくは松葉杖だけど…大丈夫かい?」
『…はい』
医者が何か紙をめくる
その音にさえ腹わたが煮えくり返る
「じゃあ、また明日の朝来るからね」
私は返事しないで窓の外を見る
医者たちが去って行った。
そんな背中を私は恨めしそうに見るしかなかった
『…バスケしたい』
窓の外を見たらバスケットゴールがあった
そこで小学生くらいの子達がシュートを打って遊んでる
それを見て胸が締め付けられた
私はもぅ…シュートを打てないの?
跳ぶことはできないの?
走ることはできないの?
皆と汗流してバスケすることは…


二度とできないの?