見知らぬ彼は、私が泣き終えるまで、ずっと側にいてくれた。

誰だか分からない、見知らぬ人なのに。
怪しそうな人なのに、何故だろう。
涙が溢れ出てきても、それは今までとは少し、いや、全然違った。
隣に彼がいるだけで、気持ちが楽だった。

おかしいのかな、私。
これが今まで1番欲しかったものなのかもしれない。

側にいてくれる人が。
私には必要だったんだ。

でもまぁ、知らない人だし。
今日でさよならだし。
ちゃんとお礼言わなきゃね。

「ありがと。助けてくれて。んじゃね」
「え、あ、おい!」

彼が私を引き止めた。

「なに?」
「俺のこと、本当に覚えてないの?」
「だからいってるじゃん。それ、人間違いじゃない?さよなら。」

私がこんなヤンキーと知り合いな訳もない。
私は振り向かずに去った。


私はまだ知らなかった。
この後、彼がどれだけ大きな存在になるのかも、交わした約束も。

今思えば、あなたが生きる意味をくれたんだよね。