「椿ー。夕食出来たから取りに来てー」
一階から母さんの声が聞こえた
「はーい。健。机の上片付けといて」

健は音楽を聴きながら「おっけ」と答えた


「健くんと椿の分、これね。冷凍庫の中にアイスあるから好きな時に食べなね」
「うん、ありがとう母さん」

僕には反抗期がなかったせいか、親とはとても仲がよかった

「それにしても……緒ちゃん…亡くなったのね……」
「…うん」
母さんが涙を浮かべた

母さん……泣かないでよ……

「健くんが元気なかったのも、それが原因よね…」
さすが母さん
やはり気づいていたのか

「そうだよ」
「健くんの様子はどうなの?他には何かなかった?」
「色々混乱してるんだ。今日は一晩中慰めるつもり」
オムライスのケチャップの香りが食欲をそそる
「そうしてあげて。健くんは笑顔が一番似合う子だから…」
「わかってるって。健の事は、僕が一番知ってる」

母さんが口元を抑えてクスッと笑った
目に涙を浮かべながら笑う母さんの表情はとても複雑な気持ちになった

「そう……、食べ終わったら、食器きちんと持ってくるのよ」
「うん」


部屋の前まで来ると、健の声が聞こえた
どうやら、電話中らしい

「そ…だ………は?ちょっ………おいおま……だれ…」

(……?)

ガチャ……
「あ、ごめん電話中だった?」

こうゆう時はとぼけとくのが一番だよな

僕と目が合うと、健は少しだけドキッとしたように目を逸らした
「いや…別に?」
「………食事にしようか」

健は何かを隠した
僕にすら言えない事なのか


「うまっ」
ケチャップご飯に半熟ふわとろ卵を一気に頬張る
「母さんのオムライスだからな」
ドヤ顔で自慢気に言ってみる

笑われるかと思ったが、健は笑うことなく、また泣き出しそうになった