________ガラッ


ちょうどあたしが覗いていたその時に

扉が開いて
黒い髪があたしの視界に映った。


一瞬時が止まったかのように
体が動かなくなった。

でも
その髪は案外顔の近くにあったようで

目を動かしてみると

髪は前髪だったらしく
顔のパーツが見えた。

少しびっくりしたような顔をしているその人は、あたしをずっと見ている。

綺麗で艶のある髪。
奥二重の目。
長いまつげ。
小さな鼻。

それは女の子みたいに可愛らしい顔…


って、

顔!ち!か!い!!!!

『ぎ、ぎゃあーー!!!!!』


のんきに顔の観察なんかしてる場合じゃなかった事にやっと気づいた瞬間
光の速さで顔を離した。

すると少し顔をムッとさせた彼。

あ。
あたしが覗いてたせいで顔が近くなったっていうのに

叫びながら離されたらそりゃ嫌か。


『ぁ…ごっ、ごめんなさいっ!!』

すぐに謝った私を見た彼は
ふっ と笑ったような気がした。

そして、

「あんた、何組?」

彼は真顔であたしに聞いてきた。

『えっ…
6年A組…です、けど…』

なぜか辿々しい敬語になってしまった。

彼は今度、
顔をくしゃっとさせて笑った。


不覚にもそんな彼に少しドキッとした

「まっ、よろしく。」

そう言った彼は職員室の方に向かって行ってしまった。