美術部一年の秋山は冬馬と同じく、パーテーションの裏にモチーフを組んで絵を描く部員の一人だ。

制服の上からエンジ色のエプロンをかけた姿で作品に没頭していたが、椿の質問に突っ込みを入れずにはいれなかったようだ。

「だって〜、絵なんて努力とは無縁の世界ですよ〜?」

「え?そうなのか?冬馬」

相変わらず絵から目線をはずさず、作品を仕上げている冬馬に向かって椿はたずねた。

「ええ、僕も秋山さんと同意見です…がんばっていい絵が描けるんだったら、誰でもピカソですよ…」

「ふ、古いな冬馬…いや、しかし、じゃあ賞を取るヤツって、何が違うんだ?」

「才能じゃないですか〜?やっぱり」

秋山が、油絵の具の着いた筆を椿に向けると言った。