「玲央…僕玲央との思い出が作りたい」

「え?俺との思い出?」

奏多のいきなりの言葉に
俺は首を傾げた

「うん!だから、玲央。一緒に思い出を作りに行こう!」

「え…?えぇ?!」

奏多の提案に俺は驚く事しか
出来なかった

思い出作りに行くって言ったって
一体どこに?

それに俺はこんな体だから
外出許可はおりねぇはず…

「奏多…気持ちは嬉しいけど…俺は」

「なーに言ってんの、玲央!今日が何の日か忘れたの?」

「え?今日?」

何かあったっけ?
確か昨日は、奏多の誕生日で
祝ってやった事は覚えてる

…あっ!
もしかして…今日は…

「俺の…誕生日…!」

「やっと思い出したか!そうだよ、今日は玲央の16歳の誕生日」

忘れてた、今日が何の日なのか
すっかり忘れてた

奏多はちゃんと覚えててくれたんだな

「だから、一緒に思い出を作りに行こう!」

「行くって一体どこに?それに外出許可がおりないだろ…」

「それがね?じゃーん!外出許可貰ってきちゃいましたー!」

「え?!マジかよ!」

満面の笑みでそう言う奏多は
すごく嬉しそうだった

まさか外出許可がおりるなんてな…
夢みたいだ

「玲央の誕生日、僕が祝ってあげる!昨日僕の誕生日を祝ってくれたお礼も兼ねてね!」

「奏多…ありがとな…!」

こんなに自分の誕生日を祝ってもらって
嬉しかった事はない

「それで、一体どこに行くんだ?」

「遊園地」

「え?遊園地?」

「うん!最初で最後の…遊園地」

最初で最後
それがどういう意味なのか理解するのに
時間はかからなかった

「最初で最後…か…奏多と一緒に過ごせる時間も…あと少しだな」

「…信じたくないけど…現実なんだよね…だから今日は、そんな事忘れるくらい楽しもう!」

「おう!」

俺と奏多にとって
最初で最後の遊園地

これで最後
そんな事を考えながら

俺は奏多と一緒に
病室をあとにした