「その子の言った言葉で…新汰は記憶を失った…ひどい話でしょ…本当…」

「…その子に新汰は何って言われたんですか…?」

何を言われたのか
多分、すごいひどい事を言われたんだろうけど

「…お前なんか嫌いだ。消えちまえ。俺はお前の事を友達なんて思った事は一度もない。お前なんか何もかも失っちまえ…って…そう言われた瞬間…新汰の記憶はなくなった」

「…っ!ひでぇな…そいつ…許せねぇ」

何もかも失っちまえ
その言葉のせいで新汰は記憶を失った

そいつの存在すらも
覚えてねぇんだよな、新汰は

思い出した時…
新汰はどんな顔をするのだろうか

この自分の過去を知った時
新汰はどうなるのだろうか


「無理なお願いなのは分ってる…だけど…新汰の記憶を取り戻したいの…!新汰に笑ってほしいの…!だからお願い…!新汰の記憶を取り戻して…!」

「梓凪さん…」

梓凪さんは泣きながら頭を下げた

新汰の笑顔が見たい
この人も俺と同じ思いなんだ

「…分かりました…俺でよければ…頑張ります」

「っ?!本当…?」

「はい…でも…」

俺にはもう時間がないこと
それを伝えなければならない

残り少ない時間の中で
新汰の記憶を取り戻す事が出来るのだろうか

「…俺にはもう…時間がありません…余命があるんです…」

「…っ?!」

「俺がここにいられるのも、残りわずかです…新汰の記憶を必ず取り戻すと約束出来ませんが…それでも大丈夫ですか…?無力で申し訳ないです…」

俺の命はもってあと
1ヶ月半くらいだろうか…

そんな短い間で
記憶を取り戻す事は不可能に近い

「…それでもいい。玲央くんは無力なんかじゃないから…残り少ない時間の中で、玲央くんの出来る限りの事をやってくれれば…私は嬉しいから…無理なお願いしてごめんね…」

「いえ、全然大丈夫です。むしろ頼ってもらえて嬉しいです。残り少ないですがやれる事はやりますから」

「…ありがとう…!」


俺に出来るかどうかは分からない
だけど、新汰の記憶を取り戻すため

俺は残り少ない時間の中
頑張るよ