「そーいや、新汰は何で入院してるんだ?」

「お、俺は…その…」

そこまで言って新汰は
黙り込んでしまった

聞いてはいけない事を
聞いてしまったのだろうか

「言いたくないなら無理して言わなくてもいいんだぜ?」

「…俺は…脳の病気で入院してます…」

「…脳の病気…」

「大したことじゃないんです、全然!見ての通り元気だし!余命もないし…だけど…」

「…だけど?」

確かに、見た目は健康そうだ
だけど、脳の病気ってやばいんじゃねぇのか?

「…どんどん…記憶がなくなっていくんです…」

「…え?」

「記憶障害です…」

記憶障害…
記憶がなくなっていく…?

それって…

「家族や友達の事が分からなくなっていく…自分の家の場所…自分の名前…最終的には自分が誰なのかさえも分からなくなってしまうと…先生に言われました…」

「…そんな事って…」

今日、俺と出会ったことも
いずれ忘れちまうのか?

颯人の事も…
そんな事って…ありかよ…

「治らないのか?」

「…分かりません…いろいろ先生は言ってたと思うんですが…ショックで覚えてないんです…」

「…っ!」

一体新汰に何があったのだろう…
なぜ、記憶障害になってしまったのか

俺に出来ることは何だ…?
俺に何が出来る?

新汰を助けてやりたい
俺のこの思いは空に届くのだろうか…