そんな事を考えていると
ふいに屋上のドアが開いた

ガチャ!

「奏多さん!何やってるんですか!!」

「颯人…」

入ってきた人物は颯人だった
急いできたのか息が上がっている

「…何やってるんですか!危ないでしょ!落ちたら即死ですよ?!」

「…ごめんね…心配かけて…」

颯人の体は辛いはずなのに
僕のためにここまで走って来てくれた…

何やってんだろ…僕…

「奏多さん…泣いてるんですか…?」

「え…?」

自分の目に手を持っていくと
僕の目から涙がこぼれていた

「あれ…?何でだろ…何で泣いてるんだろ…僕」

「奏多さん…何かあったんですか?玲央さんの事で」

颯人は相変わらず鋭いね
何で僕の心が読めるの…

「玲央…僕の事嫌いになっちゃったのかな…?今日も目を合わせてくれなかった…」

「そんな事ないですよ。玲央さんが奏多さんの事を嫌う訳ないじゃないですか」

「でも…!僕が奪ってしまったんだ…玲央の希望を…!!僕のせいで…玲央は苦しんでる…!」

「奏多さん…何言ってるんですか…そんな訳ないでしょ?」

颯人は何も知らないから…
何も知らないからそんな事が言えるんだよ

「僕があの時…声をかけなければ…止めなければ…こんな事にはならなかったかもしれないのに…!」

「あの時…?」

「玲央がここで死のうとしてたんだよ…それを僕が止めた…それが僕と玲央の出会い…」

「そうだったんですか…でも奏多さんは間違ってないと思いますよ?あの時声をかけて、玲央さんを止めて正解だったんですよ」

「…っ!違う!颯人は何も分かってない…!!」

「っ?!」

「玲央は僕が知らない所でたくさん苦しんで来たんだ…楽しい事なんて何一つなかったって言ってた…どーせ死ぬからって…だからあの時…僕が止めなければ…玲央は…!!」

「笑えなかったんじゃないですか?」

「え…?」

「あの時、奏多さんが止めなければ玲央さんはあんな風に笑えなかった。奏多さんに出会えたから玲央さんは、笑えるようになった。そうじゃないんですか?」

「…っ」

確かに玲央は、笑ってくれてた
でも、今は笑ってくれない

「確かにそうかもしれない…でも…!あのまま死んでたら玲央がこうやってまた苦しめられる事もなかったかもしれないじゃないか!!」

「奏多さん!!いい加減にして下さい!!」

「っ?!」

「奏多さんは、玲央さんがあの時死んでた方がよかったって言うんですか?!奏多さんはそれでいいんですか?!玲央さんの笑顔が見れなかったかもしれないんですよ?!それでもあなたはいいって言うんですか!!!」

「…っ?!」

颯人の言う通りだ…
あの時玲央が死んでたら、玲央の笑顔は見れなかった…

あんな風に話すことも出来なかった
玲央が生きててくれたから…

僕は玲央の笑顔が見れたんだ…

僕は何を考えていたんだろ
何を言ってたんだろ

「…颯人…ごめん…僕が間違ってた…気づかせてくれてありがとう」

「いえいえ。気づいてくれたんならそれでいいいんですよ…」

「うん…颯人のおかげだよ…本当にありがとう」

颯人のおかげで気づくことが出来た
僕はもう一度玲央の笑顔が見たい

もう一度だけ…
そのために僕が出来る事は

一体何だろう…