新汰と光輝と別れた僕は
颯人の病室へと向かっていた

ガラッ

「颯人…久しぶり」

「奏多さん!お久しぶりです!元気になりましたか?もう大丈夫なんですか?」

颯人…僕の事心配してくれてたんだね…
本当に優しいね、君は

「うん…前より少し元気になったよ」

「よかったー…心配してたんですよ?」

「ごめんね…心配かけて」

「いや、いいんですよ。奏多さんが元気になってくれればそれで」

そう言った颯人の顔は
満足そうに笑っていた

「颯人…体調はどう?」

「…大丈夫ですよ!俺は全然!」

「…颯人、今嘘ついたでしょ?バレバレだよ」

明らかに颯人は嘘をついている
顔色も悪いし、やっぱり病気悪化してるのかな

「…奏多さんには、適いませんね…俺の嘘見抜けるの、奏多さんしかいませんよ」

「颯人の嘘はすぐ分かるよ」

颯人は、嘘をつくのが下手だ
目はあからさまに泳いでるし、挙動不信だから

「玲央さんが死んでから…実は俺…しばらく高熱が続いて…危なかったんです…」

「っ?!」

「危うく…死ぬところでした」

そう言う颯人は力なく笑っていた
颯人まで死ぬなんて…考えるだけで涙が出そうだ

「でも、もう大丈夫です!」

「本当に?」

「はい!元気そうでしょ?俺」

無邪気に笑う颯人を見たら
否定できなかった

「うん…でも、本当無理しちゃダメだよ?颯人までいなくなったら…僕…」

「大丈夫ですよ、奏多さん。俺はいなくなりませんから」

まるで子どもをあやすように
颯人は僕の頭を撫でた

「…颯人って僕の事子ども扱いするよね」

「え、えぇ?!そんなつもりは…」

「僕より身長高いし、大人びてるし…僕より年下のくせに…」

「か、奏多さん…落ち着いて下さい!奏多さんだって…え、えーっと…」

何を言えばいいか分らないという顔をしている
颯人を見て、僕は自然と笑っていた

「あはははっ!颯人必死すぎ!はははっ!」

「ちょ、ちょっと!奏多さん!笑わないで下さいよ!人が必死に…って!奏多さんやっと笑いましたね?」

「え?」

久しぶりに笑えた
やっと笑えたんだ、僕

「…颯人のおかげだね?」

「俺は何にもしてないですよ」

「玲央…見てるかな?」

「きっと見てますよ。奏多さんの笑顔を見て玲央さんも、笑ってると思いますよ?」

「そうだと…いいな」

「きっと、そうです!」

玲央…見てる?
僕、笑えたよ?

やっと、笑えるようになったよ?
君のいない世界で…

これからも、僕は
君のために笑い続ける