やっぱりだめだ。

聞こう。

「おまえ、やっぱなんかあっただろ。」

「あっ!んっ?えっ?

いや!今のは…

冗談!そう冗談!

ちょっと血迷っただけ。」

「なんかあっただろ?」

「いやー、なにもないよー?」

「あっただろ?」

「……うん。」

やっぱりな。

まあ、大したことないんだろうけど。

「何があったの?」

「ごめん、剣。

あんまり話したくないかな。」

「そっか、分かった。」

すっかり忘れていた。

月夜とは昨日久しぶりに会ったことを。

すごく仲良しってわけじゃないのに、こういう話聞くのは迷惑だよな。

「お待たせしました。

アップルパイになります。

ごゆっくりどうぞ。」

「うわーい、アップルパイだ!

たべよたべよ♪」

無理に元気を装ってるけど、ほんとは何かを抱えてるんだろうな。

僕には女子の気持ちなんかわからないけど、女子の悩みはすぐ解決することは知っている。

「僕にも一口くれよ。」

「やだよ、はいあーんなんて。

カップルみたいじゃん。」

「そんなことしろとは言ってねえよ!」

こうして、嘘の笑顔の月夜と放課後を過ごした。

「あ、月そろそろバスの時間だ。

帰るね。

またね~!」

「おう、またな。」

ふと、携帯を見ると葉好木からlineがきていた。

『剣、明日きったんとボウリングいこ』

そういえば、明日休みだったな。

きったんというのは葉好木の親友で、本名は上北水羽(かみきたみう)という。

はっきり言ってかわいい。

すごく。

葉好木となんで親友なんだろう。

僕とも仲良くしてくれるし。

上北と話すが僕の唯一の生きがいかもしれない。

『わかった。何時?』

いやー、上北と休日を過ごせるとは、なんて幸せ者なんだ。

明後日死のう。

お、返信きた。

『11時に駅で』

『はいよ』

よし、僕も早く帰って明日に備えよう。

そして、バス停に向かう。

バス停についさっき別れたばかりの顔があった。

しかも、何人かの女子に囲まれている。

会話が聞こえてくる。

「あんた、渡辺にあんなことしておいて、よくのうのうと過ごせるね。」

と女A。

「いや、月、そんなことしてない。」

「その月っていうのもキモイ。」

と女B。

とことんひどいな。

なにがあったのかわからんけど僕はこういうの許せない。

「てか、そのキモい顔でよく渡辺と付き合えたよね。キモ顔。」

全員で笑い出す女達。

「よお、月夜。」

「え、剣…」

今にも泣き出しそうな月夜。

大丈夫だ。追い払ってやる。

「あんた誰?

もしかしてこいつもう彼氏できたのか。

うわー、最低野郎だ。」

言われ放題だな。

「いや、僕は友達だ。」

ずっとゲラゲラ笑ってる女達。

「人が人を罵倒して笑い転げてる顔って滑稽だよな。」

笑いが止まる。

「なに?あんた?」

「なんて言うんだっけ?こういう顔のこと。

あー、思い出した。

『キモ顔』だったな。」

「は?」

おー、怒ってる怒ってる。

「怒るとさらに滑稽だな。」

「こいつ、ムカつく。」

と女B。

「もう、行こう。」

と女C。

「くそっ、覚えとけよ。」

あんな滑稽な顔わすれるかよ。

女子なのに口悪いな。

「あの…剣…。」

「何も言わなくていいから。

ほら、バスきたぞ。」

「うん、

ありがとう。」

「どういたしまして。

ああいうの気にするなよ。」

「分かった、ばいばい。」

「おう、またな。」

そして、バスが出る。

月夜と僕は家が真逆だからバスは違うのだ。

頑張れよ、月夜。

僕は早く帰って明日に備えなければ。

いやー楽しみだなぁ♪

僕はボウリング得意なのさ。

いいところ見せてやろう♪

帰宅。

「けん~~!

お父さんがね!私の魔法よりお父さんのソードの方が強いって言うんだけどね!

剣はどう思う?」

「どっちでもいいわ。

てか、厨二病抜けて普通になってんぞ。

おしとやかな聖母さん設定はどうした。」

「…はっ!」

「…はっ!じゃねえよ。

僕早く寝なきゃいけないから、邪魔すんなよ。」

「剣、冷たい。」

無視して部屋へ。

あー、普通の家庭がほしい。

そんなことより、明日のために準備しなくてわ。