授業が終わって葉好木を駅まで送る。

葉好木は電車で通っているためここでお別れ。

「また、明日な。」

「うん、ばいばい。」

こうして見送ったあと、とても嬉しい顔に会う。

「おー!夏喜じゃないか!」

安藤夏喜(あんどうなつき)。

僕の親友だ。

「おお!剣!

一週間ぶりくらいか?」

こいつとは中学校入学したてのころ出会い、それからの付き合いだ。

会ったばっかりのころはとても仲が悪かったが、今では唯一心の許せる友達だ。

もちろん、男だ。

「あー、そのくらいだな。

おまえ暇か?」

「いや、残念ながらあまり暇じゃない。」

「そうか、

じゃ、また今度カラオケでも行こうや。」

「そうだな、

基本的には暇だからいつでも誘ってくれ。」

「おう、またな。」

「じゃ。」

そう言って去っていった。

多分、葉好木の乗った電車に乗っていて、葉好木とすれ違いに降りてきたのだろう。

てことは、もしかして…

「おーい!けーん!」

月夜だ。

月夜と夏喜は同じ学校なのだ。

「2日連続で会うなんて珍しいな。」

「2日連続?

あー、昨日会ったっけ?」

「会ったよ。」

「あからさまにしょんぼりしないでよ!

覚えてるって!

冗談だって!」

そうか、ならよかった。

「ところで剣、暇?」

「暇っちゃ暇だけど…」

「じゃ、付き合って。」

「どこに?」

「うーん、月も暇だからー

暇を共有できればって!

昨日のカフェでいい?」

「ああ、分かった。」

2人で歩くとふと気づく。

これ、デートみたい!

やべ、なんかちょっと恥ずかしい。

「剣、どうしたの?」

「や、なんでもない。」

「あっれー?顔がちょっと赤いよー?

もしかしてー、デートみたい!とか思ってたのかなー?」

「思ってない!思ってない!」

「図星だったんだ、」

「図星ジャナイデスヨ。」

「なんか、剣、キャラ変わってるよ?」

「もう、この話やめにしないか。」

まあ、しばらくいじられていたんだけど。

カフェに着いて一番奥の席に座る。

昨日、月夜とその友達がいた場所だ。

「そういえば、おまえ、今日友達いないのか?」

「うん、まあね。」

「女子って群れてないと何もできないんじゃないの?」

「剣、女の子はね、一人になると強くなるんだよ。」

「急に真面目だな。」

「剣はさ、友達いなかったらどうする?」

「どうするって?」

「ほんとに誰も友達がいないの。

日常会話は親と必要最低限くらいなの。

それで、いじめられてたらどうする?」

「どうするもなにも想像できないな。」

こいつ、もしかして…

「おまえ、いじめられてんの?」

「ううんっ!違うの!

ふと思っただけなの。」

「ほんとか?」

「ほんとほんと。」

「なら、よかった。」

よくない。

こいつ今ちょっと寂しそうな顔した。

なにかあったんだろう。

だけど、

僕になにかできる問題じゃないだろうし、僕がでていっても迷惑だろう。

女子の問題だ。

自然に解決するだろう。

「剣ってさ、好きな子とかいないの?」

「いきなりなんなんだ。」

「いや、ちょっと気になってさ。

で、いるの?いな…」

「あ、すいませーん。

アメリカンコーヒー、砂糖とミルクいりません。

おまえ、どうする?」

「あ、紅茶とアップルパイで。

って、話聞いてんの!?」

「あー、なんの話してたっけ?

コーヒーの話だっけ?」

「好きな人の話!」

「女子ってほんとそういうの好きだよなー。

誰が何を好きでも別に良くないか?

ちなみに僕はブラックコーヒーが好きだ。」

「剣は女子女子女子女子っていつもいつも!」

「いつもって言うほど頻繁に話してないぞ?」

「そういうことじゃなくてさ!

質問に答えてほしいわけですよ。

いるの?いな…」

「お待たせしましたー、アメリカンコーヒーと紅茶になります。

アップルパイはのちほどお持ちしますね。

ごゆっくりどうぞ。」

「お、きたきた。」

月夜がプルプルしている。

まあ、話をことごとく邪魔されたらこうなるわな。

そろそろ相手してあげるか。

「好きとかそういうのは分からん。」

「そうなんだ。

気になる子とかはいないの?」

「気になるほど深い仲の女友達なんか僕にはいない。」

「なるほど…深刻だね…。」

「哀れまないでくれ、僕だって悲しいんだ。」

女子ってなんでこう群れて好きとか嫌いとかな敏感でぐいぐいエグいこと言ってくるんだろうか。

「はぁ~。」

ため息をつく月夜。

「ねえ、剣、

月と付き合ってよ。」