試合が始まった。
きっと僕は今彼より劣っているだろう。
運動はろくにしていない。
ましてや剣道なんて辞めてから一度もしていない。
昔の経験のままにしている。
「「やぁあー!」」
ばんっ!だんっ!
竹刀がぶつかり合う。
「なんで、嘘の噂なんか流した!」
「そんなんどうでもいいだろ!」
ばんっ!
すぱんっ!
「どうせ、あいつがふってプライドに傷でもついたんだろ!」
「うるさい!」
すぱんっ!
渡辺の竹刀が僕の頭を捉え、そして、
「面あり!」
一本とられた。
もう一本とられたら負けだ。
「二本目!」
「「やぁあああ!」」
月夜はちゃんと見ているだろうか。
「ふったのは俺だ!」
「じゃあ、なんであんなことするんだよ!」
ばんっ!
「俺がかわいそうな人になったらまたすぐ彼女できるだろうと思ってさ!」
ぶちっ。
こいつゲス野郎だ。
浮気されたとか嘘の噂を流して、浮気されたかわいそうな自分を作って、同情を誘って新しい彼女を作ろうとしてたのか。
「てめぇええ!」
僕の竹刀が渡辺の面をたたき割る。
「面あり!」
こいつ許さねぇ!
「勝負!」
「てめえ!そんなことのために!
どんだけ、月夜が、悲しんでるか、知ってんのか!」
やばい、体力が…
「知らねえよばーか。
てか、おまえ息上がってんじゃん。」
「はぁ、はぁ…」
「落ちたもんだな!
最強さんよぉ!」
渡辺のラッシュ。
避けるのがやっとだ。
「ハア…。」
ばんっ!ばんっ!ばんっ!
「どうしたどうした!」
「くそ…このままじゃ…負ける…。」
その時、観衆から声が届いた。
「剣~~!
がんばってよぉ~!」
「月夜…。」
「月…ううん、わたし、いろんな噂流されて、いろんな嫌がらせされるの嫌だった!
でも、それが渡辺だってことが一番嫌だった!
フられたけど、ずっと引きずってた!
渡辺が好きだった!
違う!好き!
だから剣!
さっさと倒して忘れさせてよ!」
月夜は微笑みながら、両目から一粒ずつの涙をこぼした。
「倒して。」
「うらぁああぁあぁあ!」
上がらない腕、疲れきってる足。
そんな中放てる技はこれしかなかった。
すぱんっ!
「銅あり!」
「それまで!」
勝った…。
良かった…。
観衆の中から一人の女の子が渡辺のところへ駆け寄って
一発いれた。
しかも股間に。
転げ回る渡辺。
その女の子は
「渡辺!あんた最低だよ!
月夜にあんなことして!」
その他5人くらいの女の子も駆け寄って
「最低!」
「死ね!」
股間に一発いれられたうえにあの罵倒は流石に可哀想だな。
まあ、剣道の防具、股間くらいしか攻撃できる場所ないもんな。
「もう、いいよ。」
月夜がそう言った。
「でも…。」
そして、月夜が
渡辺の股間に一発。
「「「「「えぇーー!?」」」」」
「悪かった…。」
渡辺沈没。
「ほら、反省してるみたいだしさ!
わたしももう大丈夫!」
「月夜…。」
「わたしたちもごめんね…。
月夜のこと避けて。」
「また、友達してくれる?」
月夜の返事は決まっていた。
「うんっ!」
ふぅ…よかった。
なんか、友達と感動的なことになってるけど僕の頑張りはどうなんでしょうね。
まあ、いいや。
ささっと撤退しよう。
そして、武道場をあとにする。
歩いて駅まで行くのもしんどいな…。
「よっ、救世主。」
夏喜だ。
「おう…ぼろくそにやられてたけどな。」
「そんなんじゃ駅まで行けないだろ。
飯でも食ってこうぜ。」
「おう。
おまえのおかげで助かった。
ありがとな。」
「お安いご用さ。」
「しばらく月夜を見守っててやってくれ。」
「おう。」
夏喜は僕の親友だ。
こいつとは一生仲良い気がする。
「あ、でもあの子、高校ではもう彼氏できないと思うよ。」
「なんで?」
「噂は噂だけど、男子の評判悪くなっちゃったからね。
さっき股間蹴ってたし…。」
「そうか…。」
まあ、あいつなら強く生きられるだろうよ。
その夜僕はぐっすりと眠った。
疲れていたせいか帰ったらすぐに寝てしまった。
だから、夜来ていたlineにも気付かないわけで。
朝起きたら大変なことになってるとも知らずにのんきな眠りについていた。
ピチピチ
鳥の鳴き声とカーテンの隙間から差し込む朝日で目が覚める。
「ふああぁぁ…。よく寝た。」
そこに放り投げてある携帯に気づく。
「ああ!充電すんの忘れた!」
そして、とっさに携帯の画面を見ると
東原月夜
『付き合ってください。』
おいおい。
こいつの付き合ってくださいは信用ならない上に何か良くないものを運んでくる気がするんだが。
しかも、なんで人生で今まで一度もなかったイベントが同じ人から二回も開催されてんの。
もう、わけわからん。
僕はこう返信した。
『なんの冗談すかね?』
よし、学校に行こう。
それから考えよう。
「息子よ!我のエヴァーラスティング…」
「うるせえ親父!今それどころじゃねえんだよ!」
「す、すいません。」
「じゃ、行ってくるわ。」
そして、家を出た。
歩いているときもバスに乗っているときも授業を受けているときもずっとそのことを考えていた。
そして、放課後lineには月夜からこう来ていた。
『駅まできて』
よし、行くか。
「剣ー、今日はー?」
いつものように葉好木が遠まわしに誘ってくる。
「今日もごめんな。
じゃ、急いでるから。」
「付き合い悪いなぁ。」
教室を後にする。
ゆっくりと駅に向かう予定だったが、自然と足が早く動いてしまう。
月夜の電車がくる10分も前に着いてしまった。
この待ち時間がやけにどきどきする。
10分が100分にも感じられた。
そして、
「剣~!」
月夜が来た。
いつも通り、元気な笑顔で。
「よ。」
「ども~。」
なんだ、この会話。
「…で?」
「はい?」
「昨日のはなんだ?」
「へっ!?…」
急に顔を赤らめるな。
本気かと思うだろ。
「とりあえず座るか。」
「うん。」
誰もいなくなった駅のいすに座る。
「……。」
「……。」
「「あの!」」
「なんだ?」
「剣からどうぞ。」
「いや、月夜から言えよ。」
「いや、剣から。」
「あのなぁ…
呼び出したのおまえだぞ?」
「そうでした…。」
そうですよ。
僕はまたなにかあったんじゃないかと心配なんだ。
まだ嫌がらせが続いてるとか、噂が広がってるとか。
そういうのを心配してるんだ。
「あの、剣。」
「ん?」
「ありがとう。」
「ああ、感謝しろ。
僕だって結構恥ずかしかった上にしんどかったんだ。」
「うん、ありがとう。」
「それだけ?」
「…うん、それだけ。」
昨日のはなんだったんだろうか。
まあ、元気そうだし大丈夫かな。
達者でな…。
なんてね。
「じゃ、またな。」
「うん、ばいばい。」
手を振ってお別れをする。
あいつはもう友達がいるから大丈夫だ。
僕が三歩目を踏み出したぐらいだろうか。
そんな細かいことはどうでもいい。
後ろから小さい、でも鋭く聞こえる声でこう聞こえた。
「…それだけじゃない。」
今度は大きい声で
「ごめん!それだけじゃない!
昨日も言ったけど付き合ってほしいの!
たぶん剣が好き!」
ふぅ…。
細かいことはどうでもいい。とか言ったけど、僕は三歩ほどしか動いてないんだ。
「うるせえよ!
声でけえよ!
距離考えろ!」
「いやぁ~こういう時は叫ぶもんかなぁ~と。」
てへ。
てへ。じゃねえよ。
てか、こいつ今好きとか言ったか?
「ごめん、今なんて?」
「てへ。」
「そこじゃねえよ!
その前だ!」
「いやぁ~こういう時は叫ぶもんかなぁ~と。」
「ごめん、もう一個前だ。」
「たぶん剣が好き。」
どき。
「その前は?」
「付き合ってほしいの。」
どき。どき。
こいつは本気か?
寄りにもよって僕だぞ?
しかも、告白とかされたことないからどう答えたらいいかわからん。
まずこれ告白か?
「告白か?」
「そんな恥ずかしいこと言わせないでよ。」
どうやらそうらしい。
僕はこういうの初めてだからこのときはつい
「ご、ごめん!
ほ、保留で!」
時間を頂いてしまった。
そして、家に帰り必死に考えた。
Q.僕は月夜のことが好きだろうか?
A.嫌いじゃない。
Q.彼女がほしいだろうか?
A.どっちでもいい。
ダメだこりゃ。
考えてもらちがあかん。
そんなとき、夏喜の言葉を思い出した。
『 あ、でもあの子、高校ではもう彼氏できないと思うよ。 』
うーん。
悩みどころだが。
そこで、僕はあることを心に深く決めて、この問題の解決策を作った。
ある二つのことを決めて。
僕は葉好木に話そうと葉好木のクラスを訪れていた。
「葉好木~。」
「なに~。」
こいつの間の抜けた感じはいつまでも変わらない。
そういうところで信頼できるんだ。
「あのさ、女って何考えてんの?」
「うん、ごめん、何言ってるのかさっぱり分かんないんだけど。」
「ああ、すまんいきなりすぎたな。
女の子の頭の中はどうなってるんだ?」
「さっきと言ってること変わんないからね。
それはね、好きな人のことをいつも考えているのよ♥」
「きもちわるっ!」
「それはどっちに対して!?
女の子の頭の中!?それとも葉好木!?」
「いや、葉好木に決まっとるやん。」
どごっ。
鈍い音が響く。
あぁ…頭の上にひよこが見える…。
「ひどい!葉好木だって好きな人くらいいるもん!」
こいつ今なんて言った?
「おまえ、好きな人いるのか!?」
「ふふん♪」
鼻高々にする。
なんというか、ちょっとショックだ。
だけどちょうどいい機会だ。
「ま、まあ、それはいいとして、好きな人ってコロコロ変わるのか?」
「葉好木は一途だからね☆」
こいつツキノワグマでも好きになったのかな?
てことはあいつは一途じゃないということか。
「その好きな人に告白したらOKほしいのか?」
「そりゃそうでしょ。」
「そうなのか。
葉好木してくれば?(ツキノワグマに)」
「ひゃぇっ!」
「なんか変な声でたぞ。」
「し、し、しないしないっ。
そんな勇気葉好木にないもん。」
「そうか、ならやめとけ(ツキノワグマは)。」
「うん…。」
どんだけこいつツキノワグマ好きなんだよ。
「てことは、おまえはいつもツキノワグマのこと考えてるのか?」
「ん?」
「いや、だからおまえ、好きな人のことを女の子はいつも考えてるって言ったじゃん?
だから、おまえはツキノワグマのこといつも考えてるのかなぁって。」
「あのさ、剣…。」
あれ?なんか怒ってる?
「剣は葉好木の好きな人がツキノワグマだと思ってたわけ?」
はっ!
つい声に出して言ってしまった。
「いやぁ、葉好木さんが熊好きなわけないじゃないですかぁ…。
もしかして、熊好きだったり…。」
「しないよ!バカッ!」
本日二度目のチョップが決まる。
まあ、葉好木のおかげでいろいろ分かった。
あいつは今僕のことを考えている。かもしれない。
これでようやくまとまった。
月夜にlineする。
『今日会えるか?』
放課後
今日はカフェで待ち合わせする。
「剣~!」
「おう。
その後の話聞かせてくれよ。」
「あのね、渡辺が柔らかくなった。
あの後ももう一回謝りにきたし、優しい友達としてやり直せてる。
女の子の友達はたくさん戻ってきてくれた。
男の子は…あんまりだけどね。」
「そりゃ、よかった。」
「ほんとありがとね。
剣がいなかったら高校生活ずっと苦しかったかもしれない。」
「おう。」
「あとね、剣のことがすごい話題になってるよ。」
「お?
どんな風に?」
「急に剣道部を襲った不審者。」
「ちょっと待て!
僕、むしろ救世主じゃねえのか!?」
「いやいや~、あれは明らかにテロリストでしょ~。
いきなりやって来てあれだけ騒がせて、何も言わずに帰るなんて。」
うっ…。
否定できない。
「まあ、わたしと夏喜くんで弁解してるんだけどね。
あと、渡辺も。」
「あいつがねぇ。
ほんとに柔らかくなったんだな。」
「うん!」
あいつは魔が差しただけなんだろうな。
月夜が彼氏として認めるくらいなんだ。
悪いやつなはずがなかったんだ。
「あの、剣?」
「付き合うか。」
「へっ!?」
僕が決めたことは付き合うということだ。
もう一つあるんだがそれはまだ内緒だ。
「付き合おうか。」
「い、いいの?」
「ああ。」
月夜ごめん。
僕は君のためを思ってこれを決意したんだ。
僕がどんなに悪者になっても構わない。
僕はいつからこんな自己犠牲野郎になったんだろうか。
でも、月夜の幸せはきっと僕じゃないから。
僕は月夜、君を悲しませることになるだろう。
こうして、僕は月夜と付き合うことにしたのだが、なんにせよ僕は付き合うことは愚か、告白されることも初めてなわけだから、なにをしたらいいのかさっぱりわからなかった。
まあ、それは月夜に任せれば何とかしてくれるだろう。
そんなことより、葉好木に言ったほうがいいんだろうか?
どんな反応をするのか分からないが若干怖い。
『放課後遊べなくなるじゃん!』
とか言われそう。
まあ、隠し通せるわけないか。
言うしかない。
「なあ葉好木。
僕に彼女できたらどう思う?」
「うーん。
葉好木に彼氏できたらどう思う?」
そうだな。
ちょっと寂しいかな。
あいつもそんな気持ちなのか。
「なるほど。
そんな感じか。」
「どんな気持ちなの?」
「寂しい。」
「そうなんだ。」
「違うのか?」
「まあ、そんな感じかな。」
「そ、そうか。」
ちょっと言い出しにくくなったな。
「あのさ、葉好木。」
「うん?」
「できた。」
「なにが?」
「彼女。」
「へ?」
「彼女ができた。」
「えぇえぇぇーーーーーーー!!!
剣に!?彼女が!?」
「ああ。」
「うぅ~。」
「でも、彼女っぽくないっていうか、僕の中では彼女ではないって言うか。」
「そうなんだ。」
「うん。」
葉好木がしょんぼりしてる。
僕だって葉好木に彼氏ができたら寂しい。
やっぱり言うべきじゃなかったのかな?
でも、別に僕が葉好木好きなわけでも葉好木が僕を好きなわけでもないから、干渉することはできないんだけどな。
「大丈夫だ、葉好木。
葉好木と遊ぶ時間だって作る。
葉好木とはできる限りいつも通りになるようにするからさ。」
「うん…。」
なんかすごい落ち込んでるな。
そんなに僕に彼女ができることが嫌なのか。
「なんで、そんなに落ち込むんだよ。」
「うっさい!」
はいはい。
頭を撫でてやる。
これで少しは機嫌治ればいいんだけどな。
「だから、もしかしたらこれから放課後とかちょっと予定入るかもしれないけど、
さっき言ったとおりできる限りいつも通りにするからさ。」
「うん…。」
お、lineが入ってる。
なになに?
東原月夜
『今日放課後空いてる?』
早速来たか。
『今のところ空いてる。
てか、空けとく。』
なにするんだろうな。
まあ、まずこの女を説得しなければ。
「早速だが葉好木。
今日は予定が入ってしまった。」
「そう。」
おいおい、さっきまで落ち込んでたのに今は素っ気ないな。
「おう。」
まあ、いいや。
そのうちいつも通りに戻るだろう。
そして、放課後。
「プリを撮りに行くわよ!」
「行くわよじゃねえよ。
キャラ変わってんぞ。
てか、プリってなんだ?」
「えぇえぇぇーーーーーーー!!!
知らないの!?」
「プリクラだよ!プリクラ!」
プリ倉?
「どんな倉なんだ?」
「あー、もういいや。
中に入ると急に発光して外に出るとプリっていうものが出てくる倉。」
「そうかそうか。
それはどこにあるんだ?」
「まあ、ついてきてよ。」
「おう。」
歩くこと約10分。
「着いたよ。」
「これか?
僕が想像してたのと大分違う。」
「まあ、いいから入るよ。」
中に入るとすごく光ってまぶしかった。
なんだここ?
あからさまに怪しいぞ。
「ほら~、剣ちゃんと覚えてね。
まずここにお金を入れて…」
「そうか、ここに金を入れるのか。」
そう言って400円投入。
「えー、半分払おうと思ったのに。」
「こういうのは男が払うんだってさ。」
昨日ネットで調べたんだ。
大した金じゃなかったら奢れ
って書いてあったぞ。
「…でー、この中からフレームを選んでー…」
「あー、言われても分かんないからやってくれ。」
あと近い。
あんまり寄るな。
いい匂いするだろうが。
「もー…はい、撮るよ~。」
「なにを…」
パシャ
「あーあー、変なとこ見てる。」
写真撮るのか。
聞いてないぞ。
「はい、もう一まーい。」
月夜とプリを2枚撮った。
「2枚とも払ってくれなくてもよかったのに。」
「あのくらい出すよ。」
あんまり小遣いとか休みにバイトとかしてもらってる金とか使わないからな。
「楽しかったー!久々のデート!」
「え、これデートなの?」
「ほんと、なにも知らないんだねぇ。」
「まあな。」
「でも、わたし、剣昔誰かと付き合ってた気がするんだけど…
気のせいかな。」
「気のせいだろ。
てか、月夜、月じゃなくてわたしって言うようになったんだな。」
「うん!
変わろうと思ってね。」
「そうかそうか。
そりゃいいことだ。」
月夜は強いけど、まだ少し足りないんだ。
僕はそれを見守らなきゃいけない。
もうすぐ三学期が終わる。
まあ、高校一年生が終わるということだ。
長いようで短かったな。
それより僕はこの一年
何をしていたっけ?
すごい何もしていなかったんだろう。
上北がウルトラかわいかったのしか覚えてない。
あと、はっちがうるさかったのくらいか。
一番の事件は最近の月夜事件だけどな。
ちなみに上北、葉好木、僕は理系、はっちは文系なので火鈴と同じクラスになることはない。
よかったよかった。
来年…上北と同じクラスにならないかな…。
月夜とは付き合ってから何回かデート(?)をしている。
そのたびにプリを撮るのだが、それって意味があるのか?
しかも1日に二枚も三枚も。
うーん、女子って難しいな。
あれからずっと葉好木は拗ねてるし。
よくわからん。
ちなみに今日は日曜日。
月夜とは遊ばず、葉好木とも遊ばず。
息抜きにはっちと上北、それと他の友達と一緒にカラオケである。
上北の歌声聞いたら天に昇るかもしれん。
待ち合わせ場所に行く僕。
すると、もう上北がいる。
あ、これなんかデジャヴ。
「よう、上北。」
「あ、おはよぉ~。剣~。」
僕は幸せ、幸運。
あぁ~、ついてるなぁ。
「おはよ!剣!」
はっちもいやがった!
くそっ!こいつ!僕と上北の時間を奪いやがって!
こいつのせいでプラマイゼロじゃねえかこんちくしょう!
「あ、あぁ…おはよう…。」
「何落ち込んでんの?剣。」
「今日は葉好木がいないからだよ~。」
うん、違います上北さん。
「落ち込んでない落ち込んでない。
ところで上北。
もしかして今日も早くきたのか?」
「ううん~。
今日はね、はっちと10分前くらいにきたのよ~。」
「そうか、ならよかった。」
「うん~。
あの時からあんまり経ってないのに約束もう叶っちゃったね~。」
「え、あの時ってなに!?
約束って!?」
そういえばはっちはいなかったな。
「二、三週間くらい前に一緒にボウリング行ったんだよ。
それで、また一緒に遊ぼうって話したんだよ。」
「えー!はっち呼ばれてないっすよ!」
「呼んでないからな。」
「ごめんね~。」
「うぅ~。」
その他メンバーも揃い、カラオケへ向かう。
カラオケではやはり上北の天使の歌声に僕はメロメロだった。
はっちの爆音は不快であった。
僕は…歌はあんまり得意じゃないんだ。
カラオケから出るとはっちが
「今日の記念にみんなでプリ撮ろうよ!」
一斉に湧き上がり賛同する一同。
プリというのはこういう使い方も有りなのか。
勉強になった。
そして、記念のプリを撮った♪
ん?なんで♪かって?
そりゃ、上北が写ってるからに決まってるだろ!
やばい…笑顔が天使。
※2上北には彼氏がいます。
帰り道上北が耳元でこそっと、
「次の約束、しよ?」
うん、かわいい。
「次って?」
「前回みたいに、また次があるように。」
「ああ、またきっと遊ぼうな。」
「うん!」
また次があるとは幸せだ。
このときなんで上北が僕だけにこそっとこの約束をしたのか疑問に思わなかったのか。
このときから上北は悩みを抱えていたことに僕はなんで気づかなかったのか。
もっと言えば
あんなに元気なはっちも悩みを抱えていたことに僕は気づいていなかった。
もちろんそれが僕の人生をさらにねじ曲げるとも知るはずがなかった。
みんなと別れ家に帰る。
あと2日で終業式だ。
携帯にはlineが入っていた。
東原月夜
『終業式の日の午後、デートね!』
『わかった』
返事が素っ気ないとよく言われる。
『あと、春休みうちに来ない?』
女子の家。
女子の家?
女子の家!?
なんだ!?結婚するのか!?
さすがに早すぎやしないか!?
『結婚するのか?』
聞いてみた。
『しないよ!
遊びに来ないか聞いてるんだよ!』
あ、そういうこと。
『行く』
遊びに行くにしても緊張するな。
また別のlineが入っていた。
野中葉好木
『春休み、遊びにきて』
ん?どういうことだ?
『どういうこと?』
『うちのほうに』
なるほど。
確かに僕はあいつんちのほうに行ったことがない。
逆に葉好木もうちのほうにきたことがない。
『わかった』
なんか春休みの予定がどっと増えたな。
嬉しい限りだ。
上北とも約束したし、今までの僕だったらこんなに女の子と遊ぶことなかったぞ。
終業式の日
午後からデートか。
今日はなにをするんだろうな。
そして午後駅にて。
「今日は遠出をします!」
「う、うん。」
「以上!」
「具体的には?」
「都会のほうに行こうよ。」
「お、おう。」
まあ、任せるか。
「じゃあ、着いていくから。
切符はどこまで?」
電車に揺られて一時間。
県一番の都会にきた。
まあ、県庁所在地ってやつだ。
すごい広い道にすごいでかい商店街。
少し感動した。
「おお、あっちとは大違いだな。」
「今日はここぶらぶらしよ。」
「そうだな。」
そう言いながらもふと思う。
いつも任せきりで悪いなって。
だらだらぶらぶら歩きながら、月夜の服見たり、月夜の化粧品見たり、月夜の装飾品見たり。
これただの荷物持ちじゃねえか!
任せきりで悪くなかったわ!
あいつがしたいことしてただけだったわ!
まあ、でも楽しそうだからいいか。
装飾品店でふと見つけた月の形のネックレス。
月夜にみつからないようにこっそり購入。
そして、持っている荷物の中に入れる。
服のおまけだとか思って付けてくれるだろう。
5時間ほど遊んで楽しかったねと電車に乗る。
楽しそうでなによりです。
ずっと荷物持ちでしたがね。
「剣。」
「ん?」
「好き。」
「きゅ、急にどうした。
恥ずかしいからやめろ…。」
「わたしのほうが恥ずかしいよ。」
「あと、電車の中だしな…。」
「うん。」
こいつの好きには濁りがある。
透き通った純粋な好きじゃない。
こいつのそんな好きはまだ別にあるから。
「剣!じゃーん!」
と、紙袋を取り出す。
「剣にプレゼントでーす♪」
「おお!ありがとう!
開けていいか?」
「どうぞどうぞ♪」
紙袋を開けると中には
月の形のネックレス。
「どうして…。」
「なにが?」
「いや、なんでもない。
ありがとな。」
「うん!」
月夜と僕は偶然にもお互いに同じプレゼントをしたのだ。
いや、偶然じゃないのかもな。
「そういえば、おまえんちいつ行けばいい?」
「わたし、明日から旅行で一週間いないからそのあとかな。」
「そうか、わかった。」
春休みは短い。
そんな短い休みを彼女と過ごせるリア充たちの気持ちがようやくわかった。
普段より楽しいな。
でも、
楽しいだけじゃないことを僕は分かっていた。
ここからは月夜との話の全ての謎(?)が解ける解決編だ。
一週間後
月夜が旅行から帰ってきて、lineで話す。
『剣はいつ暇?』
『僕はいつでも暇だからな』
『じゃあ、旅行の片付けとかで明日は忙しいから、明後日きてくれる?』
『ああ、わかった
ところでおまえんちどこだ?』
家の場所の場所を教えてもらい、月夜は忙しいからとlineをやめる。
ちょうどその時葉好木からlineがきた。
『剣、いつきてくれる?』
こいつとも約束してたんだったな。
『明後日以外ならいつでも』
『じゃあ、明明後日きて』
『了解』
スケジュールびっしりだな。
まあ、その前後は空白なんだがな。
『お昼ご飯どうする?』
『なんか店あるの?』
葉好木の住んでいる地域のことはなにも知らない。
ただド田舎だということは聞いた。
『なんもない』
『そうか、なら持ってくよ』
『葉好木が作る』
『おまえ料理とかできるのか?
どんぐりとか使わないよな?』
『使わないよ!』
こいつ料理できんのか?
『ん?てことはどこで食うんだ?』
『うち』
女子の家
女子の家?
女子の家!?
結婚するのか!?
『結婚するのか?』
なんか、こんな会話前にも誰かとしたような。
『うん、する』
そうか、するのか。
ん?
『え?すんの?』
『してくれるんじゃないの?』
『ああ、悪い
女子の家とか行ったことないから動揺してたわ』
まあ、その前日に行くことになってるんですけどね。
『えー』
えーってなんだよ、えーって。
『えーってどういうことだよ。』
軽い気持ちでそんなことを聞いた僕に帰ってきた言葉は重かった。
『葉好木好きだよ、剣』
こいつ僕が好きだったのか。
どうせ、友達としてとかそんな感じだろう。
『おう、ありがとな』
『だから、後釜狙ってるよ』
すごいカミングアウトだった。
後釜っていうのは僕でもだいたい意味が分かった。
『僕が別れたら、告白でもしてくるのか?』
『うん
てか、前にもそう言ったじゃん』
『覚えてない』
『覚えてないのは当たり前
忘れて、今のは』
どこまで忘れればいいんだろうか。
それよりこいつ覚えてないのは当たり前ってどういうことだ?
『まあ、葉好木がご飯作るからうちにきて』
『うん、分かった』
すごく気になるが今度会ったときに聞こう。
明後日のことだけ考えていよう。
あ、それと上北のことも考え(妄想し)てよう。
※3上北には彼氏がいます。
今日は月夜の家に行く日なんだが
迷った。
ここはどこだ?
バスできた。
月夜に言われたバス停で降りた。
で、ここはどこだ?
待ち合わせ場所が見つからない。
『月夜助けてくれ』
ヘルプline送信。
…
……
………
こない、返信が。
「剣~!」
「月夜っ!」
「どこまで来てんの!?
全然待ち合わせ場所と違うじゃん!」
「いやー、迷ったんだ。」
「迷ってもこんなとこまでくるほうがおかしいよ!」
「すまんすまん。
ところでlineしたのに返信なかったんだけど。」
「あー、携帯家に置いてきたから。
そんなことより、ほらっ、いくよ。」
「おう。」
歩き出すと手をつないできた。
手繋いだの初めてだな。
全国の、女の子と手を繋いだことのある男はわかると思うが女の子の手って細くて、小さくて、柔らかくて、
簡単に潰れちゃいそうなんだよ。
だから、優しく守ってあげたくなる。
それが男の思ってることだと思うぜ。
月夜の家に着くと月夜のお母さんが出迎えてくれた。
小さいころ一緒に剣道に通っていたから、お互いに顔は知っていた。
「剣くん、大きくなったねぇ。」
「はい。」
小学校以来なのでしばらく顔も合わせてない。
「ゆっくりしていってね。」
「はい、ありがとうございます。」
「じゃ、部屋行こっか。」
「お、おう!」
なんか緊張するなぁ。
階段を上ろうとふと上を見上げると、なにか陰が動いた気がした。
「そういえば月夜、妹いたっけ?」
「うん、剣道やってたよ。」
「そういえば一時期いた気がする。」
そんな家族構成だ。
父母妹と生活しているらしい。
さきほど登場した母妹だが、なにもフラグは立っていないので気にしない方がいいぞ。
って、誰に語りかけてるのやら。
「ここがわたしの部屋。」
中に入ると全体的に白っぽく、ピンクの小物が多い。
そして、いい匂い。
「待っててね、お菓子持ってくるから。」
「お構いなく。」
部屋を出ていく月夜。
その間に部屋をジロジロ見渡してみる。
テーブルと机、ベッドで部屋の大半のスペースをとっていて、全然ちらかっていなく、きれいだった。
部屋をうろついてみると机の上にある写真を見つける。
小学生のころ、僕と月夜が一緒に剣道をしてたころに撮った写真だ。
僕も同じ写真を持っているが僕が持っている写真とは少し違った。
その写真には僕と月夜しか写っていない。
僕が持っている写真のほうは大会に出場したときに記念に団体戦のメンバーで撮った集合写真だ。
だから、他のメンバーも写っている。
でも、月夜の写真はそれが切り取られていた。
どうしてだ?
月夜が戻ってくる。
「その写真ね、実はわたし小学校のときから剣が好きだったの。
それでその時に切り取って今もずっと飾ってある。」
「そうだったのか。」
知らなかった。
むしろ大して仲良くなかった気がするんだけどな。
「そういえば小学校のとき、おまえ眼鏡だったな。」
「そうだよ~。
あの時のわたしは思い出したくない…。」
「え、僕、眼鏡のほうが好きだけど。」
一瞬月夜の顔が歪み、すごい早さで机を開け、眼鏡を取り出しかけた。
「これでいい?」
いいとかそういう問題じゃないんだが。
「かわいい。」
ぽっと赤くなる月夜。
僕も小学校のときは月夜をかわいいと思ってたんだ。
好きとかそういうのではないけどな。
でも、徐々にギャル化していく月夜は昔の純粋な眼鏡の女の子を失っていった。
「これから、眼鏡にしようか?」
「いやいや、月夜がコンタクトのほうがいいからそうしたんだろ?」
「うん、まあね。
でも、剣がそっちがいいなら…」
そっちがいいけども。
「僕の好みに合わせて変えることないさ。」
「う、うん…」
この時まだ僕は分からなかったんだ。
女の子って好きな相手の好みに合わせて生きてるということが。
「さて、なにしようか。」
「……。」
にこにこしながらこちらを見ている。
これが上北だったら即死だろうな。
「もしかして月夜さん…」
「はい?」
「プランなしっすか?」
「はい!」
「そうっすか…。」
まあ、僕も考えてなかったけどさ。
「しかも…こういうときは…
男の子はムラムラするんじゃないの…?」
なに言ってんだこいつ。
「ほら…襲いたくなるんじゃないの?」
「はぁ!?」
なに言ってんだこいつ!?
「いやいやいやいや、おまえはなにを言ってるのかね!」
ちょっと口調おかしくなったわ!
「しかも、ほら、そんな、ねえ?
僕ですからね!そう僕!」
なに言ってんだ僕は!?
自分で言っててわけわからんわ!
「わたし、剣ならいいよ?」
「いやいや、よくないよくない。
しかも、さっき、て、手繋いだばっかだぞ!?」
「じゃあ、それより、先、する?」
這い寄ってくる月夜。
「へ!?え!?」
どんどん近づいてくる月夜。
こいつ酔ってんのか!?
僕が襲われてるやないかい!
「ふふっ。
うっそー。」
こいつ…。
「結構焦っただろうが!」
「剣も男の子だねぇ。」
くそっ!
「お話でもしてよっか。」
月夜の学校の友達のこと、月夜の学校の剣道部のこと、葉好木のこと、いろんな話をして過ごした。
もちろん、リア充的な展開は一切なく、午後6時を回った。
「そろそろ帰るかな。」
「うん、バス停まで送る。
また迷子になったら困るし。」
「さすがにもうならねえよ!」
一緒に歩いてバス停に向かう。
僕はこれから月夜に大切な話をしなければいけない。
きっとひどく悲しませることになるかもしれない。
月夜がきゅっと手を握ってくる。
「なあ、月夜。」
「ん~?」
「大事なこと言うからちゃんと聞いとけよ?」
「うん?」
「別れよう、月夜。」
月夜の細くて小さくて柔らかい手が潰れてしまった気がした。
僕の決めたこと2つの2つ目は1ヶ月後に月夜と別れることだった。
付き合ってそろそろ1ヶ月が経つ。
僕は月夜の家に行くということになったときその日に別れようと決めた。
なんで別れるのか、それはこれから分かるだろう。
「なんで…?」
「月夜、おまえはまだ渡辺が好きだよ。」
僕にはなぜだか分かった。
あの渡辺と対決した日。
月夜は渡辺が大好きだってことに。
僕は付き合っていた人と別れて、その後も付き合っていた人のことが忘れられないという気持ちがなぜか分かる。
付き合ったことなんてないのに。
付き合っていた人が新しい相手を見つけていたり、異性と仲良くしていたら、もう付き合ってなんかいないのになぜだか嫉妬してしまうことがないだろうか?
きっと渡辺も同じだったはず。
だから、月夜は渡辺がまだ好きだと思う。
『 渡辺が好きだった!
違う!好き! 』
こんなこと叫んだ月夜が渡辺のことをもう忘れたなんてあり得ないんだ。
しかも、噂のせいでもう高校じゃ彼氏できない。
そんなこと月夜だって分かっていたさ。
そして、ちょうどよく僕がいた。
「なんで!?
渡辺のことなんてもう忘れたよ!」
「忘れてなんかいない!
あんなに好きだった人のことを忘れるわけがない!」
「え…。」
「僕を好きだって言ってくれたことに偽りはないと思ってる。
でも、月夜、まだ、渡辺が好きだろ?」
「そんなことは…。」
「ないって言える?」
「言え……ない。」
そうだろうな。
きっと僕は過去に好きだった人間なんだから。
渡辺より古い好きなんだろう。
「わたしね、噂のせいで高校では彼氏とかできないと思ってた。
今でも思ってる。
わたしは渡辺が好きだって気づいてた。
まだ好きなんだなって。
でも、もう一度告白するのが怖かった。
また渡辺がそれをネタに変な噂を流すんじゃないかって。
もし付き合えたとしても、その後のことも怖かった。
だから逃げてたよ。
ううん。
逃げてるの。」
「月夜。
僕がいる。」
「え?」
「僕がいるから。
もし、またそんなことがあっても、僕がいるから。
また僕が助けてやるから!
だから安心しろ!
僕は女の子には優しいんだ。」
「なにが優しいよ。
全然優しくないよ?」
あっれー。
「付き合って1ヶ月で振ってくる男の子、優しくなんかないよ。」
「ですよねー。」
「でも、優しくなくてもかっこいい。」
かっこいいってよ。
めっちゃかっこ悪いじゃんか。
「月夜、もうおまえは強い。
僕と付き合ってなくても、僕が着いているし、いつでも助けてやる。
だから、鬼ごっこはもうおしまい。
僕が捕まえた。
だから、今度は月夜が鬼になって、渡辺を追いかけてやれ。」
「うぅ…。けん~。」
泣き出す月夜を僕は抱きしめた。
「けん~。けん~。
ありがとう…。ありがとう…。
もう、わたし頑張れそうだよ…。」
「ああ、頑張れ。」
「うぅ…。」
背中を押すのが僕の役目。
僕に彼女がいるなんて似合わない。
バスがくる。
薄暗い夕方。
バスのライトが眩しい。
「もう行かなきゃだ。
これでおしまい。」
「おしまいだね。」
「またな」
そう言って微笑む僕。
「待って!」
その声に振り向くと
頬に柔らかい口づけ。
「この1ヶ月のお礼ね。」
「あ、ああ。」
お礼にしては大きすぎるよ。
バスのドアが閉まる。
目が腫れ頬に涙の跡がある月夜。
その月夜はいつものようににっこり笑ってなにかを言った。
『がんばる』
強い目でそう言った気がした。
がんばれよ、月夜。
強くなった月夜と僕の首には
同じ月が昇っていた。
恋は嘘でした。
いろんなことがあったこの1ヶ月。
それまではなにもない日々が続いていたのに。
そして、これからはまた普通の日常が始まる。
退屈と言えば退屈だけどそれはそれでいいものだ。
今日は葉好木の住んでいるほうに遊びに行く。
どんなところなのか少し楽しみだ。
『どんなところなの?』
『なにもないから何ともいえない。』
と、葉好木は言っていた。
電車を何度か乗り継ぎ二時間ほどかけて目的の駅に着く。
その道中の景色はとてもきれいだった。
てか、あいつはいつもこんなに時間をかけて学校まできてるのか。
駅を出るとそこは山だった。
山…だった。
「剣、待ってたよ。」
「おまえ、ほんとに熊だったのか。」
「山しかないからってひどいよ!」
「でも、ここでなにして遊ぶんだよ。」
「おさんぽ。」
散歩かよ。
ここまできて。
でも、まあ、いつもと違う景色で葉好木とのんびりできるっていうのも悪くないな。
「じゃあ、まずどこを案内してくれるんだ?」
「山。」
「うん、全部山だもんな。」
「とりあえずあっちのほうに。」
そう言って山を指さす。
まあ、全部山だけども。
「じゃ、いこ。」
「おう。」
歩く、歩く、歩く
「そういえば葉好木。」
「んー?」
「この前言ってた
覚えてないのが当たり前
ってどういうことだ?」
「あー、忘れなよ。
忘れた方がいいよ。」
「なんだ、その気になる言い方。
教えろよ。」
「葉好木はちょっと言えないかな。」
「そうなのか。」
言えないってどういうことなんだろうか。
少し気になる。
その後もいろんな話をしながら山を歩く。
歩く、歩く、歩く
…歩く……歩く………
「歩きすぎだろ!」
「え?そう?
まだ10km超えたくらいだけど?」
「なに?今日の目的はウォーキングですか!?
一体どのくらい歩くつもりだったんだよ!」
「今日で42.195km。」
「はぁ!?」
「あと、10kmくらい歩いたら半分だから休憩しようね。」
「まだ半分なんだ…。」
まあ、たまにはいいか。
「あ、葉好木。」
「ん?」
「そういえば別れ…」
やべっ!
こいつ後釜狙ってるんだっけ!?
今言ったらすぐ告ってくるのだろうか。
いやしかし、そんな勇気は葉好木にはないはずだ。
「そういえば、なに?」
いや、まあ後釜狙ってるとか冗談かもしれないし、
「別れた。」
「え!」
なんか嬉しそうだぁ!
どうしよう!どうしよう!
「別れたの!?」
「あ、ああ。」
「ふへへ。」
ちょーーー、嬉しそうだぁ!
怖い!なんかよくわからんけど怖い!
「は、葉好木さん?」
「なあに♪」
♪ついとるー!
「あのですね…」
「ん?♥」
♥ついとるー!
「なんでそんなに機嫌よくなったんすかね?」
僕が別れたことによって葉好木が僕を狙いやすくなった。
だから機嫌がよくなったということを確かめたかった。
「ひ♥み♥つ♥」
♥増えとるーーー!
なにこいつ!
きもちわるっ!
誰!?こいつ誰!?
僕が知ってる葉好木じゃない!
不思議と葉好木が僕のことを好きだと想像しても全く鼓動は早くならなかった。
葉好木はなんかそういう感じではない。
「葉好木、今どのくらい歩いた?」
「もう少しで葉好木んちだよぉ~♪」
1日中このテンションなのかな?
それはそれでキツいぞ。
「ねえ、剣♪
今日の予定60kmに変更しよっか☆」
「やぁめてくだぁさい~!」
葉好木の家に着く。
これだけ仲良くしていておうちの人に会うのも、家に行くのも初めてだ。
「ただいま~♪」
家着いてもこのテンションなのかよ。
「お邪魔します。」
「いらっしゃーーーい!!」
猛スピードでなんかくる!
「この子が葉好木の彼氏ねっ!」
「ち、ちがいます!
葉好木、このお方は誰だ!?」
「真菜。」
「いや、誰だよ!」
「姉。」
「おお、お姉さんですか。」
「よろしくねぇ~♪」
葉好木と似てるし、なんか某有名人にそっくりだ。
吉高由○子似だ。
ハイテンション吉高由○子だ。
「あ、入って入って~。」
「お、お邪魔します。」
こんな山にある家だからもっと古ぼけているのを想像していたが、実際は普通にきれいで築7、8年といったところだった。
リビングに入ると妹もいた。
小さかった。
しかし、
「葉好木、妹さん何歳?」
「今、11だよ。」
え?
中学2、3年という背丈だ。
明らかに周りよりでかい。
ちなみにお姉さんは普通くらいだ。
「葉好木、おまえ…」
「言うな!気にしてるんだ!」
「妹より小さい?」
「うおぉおーー!
言うなって言ったのにぃー!」
「ちなみに胸も小さいよ☆」
お姉さん登場。
「なっ!」
「真菜ぁーー!」
「おまえ…
今までごめんな…小さい小さいってバカにして…。」
「うわぁああーーー!」
こんな風に葉好木家は賑やかだった。