「ぅ…わっ!!!」
…寝覚め悪っ!!
勘弁してよ…
「また、あの夢…」
きっと、もう1人のあたしの記憶だろう。
たまに見るんだよね、こういうの。
「…げっ、もうこんな時間!?」
16歳のあたし、筏井 楓(イカダイカエデ)は、時計を両手で握りしめた後、急いで制服を着る。
寒くもないのにマフラーを首に巻いた。
マフラーは防寒具としてではなく、もはやアレを隠すための布にすぎない。
あたしはその布を、風呂以外は外さない。
寝るときも、ご飯を食べるときも。
鏡の前にたって、髪を櫛でとかす。
あたしの髪は、生まれつき茶色。
先生に“染めたな!!?”ってよく怒られた。
そんなことを思い出しながら、髪を耳の下あたりで2つに縛り、眼鏡をかける。
長い前髪は、もう1人のあたしが出てきたとき用。
理由は、目の色が変わってしまうから。
そう、あたしは二重人格だ。
もともとは茶色の普通の目の色だ。
だけど、もう1人のあたしが意識を乗っ取ってるときは、どうやら紫みたい。
「Is it all right for me to be here?
I not must exist.」
あたしは『行ってきます』のかわりにそう言って家を出た。
もう、癖になってしまった。
そう呟くのが。
まぁ、家には誰もいないけどね。
「…ってヤバイヤバイ、遅刻だぁ~~~~!!」
あたしはダッシュで学校に向かう。
本当にマズい。
今朝の夢がなければ、起きれた(かもしれない)のに~~~~~~~~~!!
走っていると、道にガラの悪いオニイサン達がいる。
わぁー、こわぁ。
避けて通ろ。
「…ッ、ゎ、ブッ!!」
…はぁ!?
あたし今避けたよね!?
なんでぶつかるわけ!?
「いってぇなぁ…?」
ニヤニヤしながら倒れたあたしを見下ろすガラの悪いヤツら。
そうか、わざとなのね!?