時雨「…俺達より、ずっと辛い思いをしてきたんだな。」
「いえ、そんなことは…」
時雨君は、あたしの顔を見つめ、前髪を退けようとした。
「…っ駄目、顔が見えちゃう…」
時雨「見たいんだ。
楓の顔を、ちゃんと。
楓は人の不幸を笑うヤツじゃない。
そんな事くらい、分かってるから。
だから、見せて?」
その言葉が嬉しくて、また少し涙がでる。
あたしは時雨君が前髪を上げるのを、じっと我慢していた。
初めて、時雨君と目が合う。
ドキンッ…
時雨「……////
楓の目、すっごい綺麗だ。」
少し照れながら、時雨君は優しく笑った。
その笑顔が、まぶしくて。
あたしも、笑ってしまった。
初めて、心から笑ったかもしれない。
時雨「俺、楓をこんな風にしたヤツを許せねぇ。
…カズサに、聞いてもいいか?」
「…わかりました。」
時雨君のためなら…
なにも怖くない。
怖いのは、時雨君が傷つくこと。
時雨君が傷つくくらいなら、あたしは喜んで憎まれる。
それで、少しでも和らぐなら。
《だからカズサ、力を貸してね。》
そう思いながら、目を閉じた。