「ある日突然、カズサはあたしの中に生まれました。

それから、あたしは常に自分と戦っていた。

人を傷つけたくない。
それが暴走族でも、です。

でもカズサは毎晩どこかのグループを潰していた。

そのたびにあたしは、意識が戻るといつも血なまぐさかった。

血塗れで倒れている人が何人も目の前にいたときだってありました。

あたしはそれが嫌だった。

だから、カズサを抑える薬を飲んで、前髪を伸ばしていたんです。

目の色が変わってしまうと、気味悪がられる。

カズサが出てくると、目が紫になってしまうんです。

それに…顔も隠したかった。

あたしがいつ、どこでどんな顔をしているか、分からなかったから。

人を殴って、笑ってるかもしれないじゃないですか。

人が泣くのを見て、楽しんでるかもしれないじゃないですか。

だから、あたしは隠すことにしたんです、すべてを。

最初、時雨君達を拒否したのだって、傷つけたくなかったからです。

華戦の人たちだって、傷つけたくなかった。

だから、時雨君達にお願いしたんです。
結果的に、無駄に終わってしまいました。

止めたくても、止められないんです。
それが誰であろうと、止められない。

…カズサであっても。

だから、カズサはそんな事言ったんだと思います。

あたしが時雨君を受け入れても、カズサはきっと受け入れない。

そうなったら、傷つくのは時雨君です。」

時雨「カズサ自身でも、自分を止められないのか?」

そうだよね、カズサ。

「きっと、そうだと思います。
ただ…カズサはあたしよりも多くのことを知っている。

だから、監禁されてたときのことも覚えているでしょう。

あたしみたいに弱虫じゃないから。

でも、カズサが覚えているという事は、あたしも思い出す可能性があるという事です。

互いに、互いの記憶の夢を見ることがあって。」

特に、時雨君の両親を殺したときの夢はよく見るんです。

…なんて、いえないけどね。