「監禁されてたのは分かります。
でも、具体的になにをされて、なにを言われたのか…全く覚えていないんです。

すみません…」

陸「…そんなに、忘れたいほど辛かったのか。」

誠「いや…?
少し、違う気がするけどな。」

介「いや…楓ちゃんだったら、忘れても無理ないよ。」

霧矢「…じゃあ、カズサに聞くのはどうだ?」


………え?


時雨「そうだ、カズサならきっと覚えているはずだ…!」

介「霧矢、たまにはいいこというじゃん~♪」

霧矢「…俺は冷静に考えてるからな。」

どうしてカズサのことを知ってるの?

なんで当たり前みたいな顔してカズサの話をしてるの?

時雨君の親を、殺したんだよ?

それを知ってて…


…いや、そんなわけない。

そんなこと、あっていいはずがない。


「…っか、カズサって誰ですか…?」

介「いいよ、楓ちゃん。
みんな知ってるんだ、カズサちゃんのこと。」

誠「その事を話そうとしたんだけど、筏井さんが飛び出しちゃったから…」


…どこまで?

どこまで知ってるの?


怖い。
今あたし、とっても怖い。


「カズサは、なんて…?」

時雨「華戦を潰したのがカズサだって事、族潰しが趣味だって事、それから…」

それから…?

それから、なに?



時雨「楓に…惚れるな、ってこと。

もし楓が好きなら、近づくなって…」

「その理由は、聞いたんですか。」

時雨「詳しくは教えてくれなかった。
ただ…ストッパーが外れてしまうから、と。

バケモノに、なってしまうからと言ってた。」


バケモノ…

カズサは、間違いなく全てを知っている。
それでいて、あたしになにも知らなくていいといった。

それに…カズサは間違ってない。

あたしと時雨君が付き合ってしまったら、最終的には時雨君が苦しむ。


なにしろあたしは…親のカタキなんだから。


カタキと恋に落ちるなんて、あってはならない。

「カズサの…言うとおりですね。」

時雨「楓…?」

ちゃんと、話さなきゃ。
でも、なにがあってもあたしの過去は話せない。

話したら、あたしも時雨君も苦しむ。

だから、ちゃんと。
辻褄を合わせて、話さなきゃ。