**秋斗side**
せっかく面白いシナリオになってたのになぁ…
案外、東雲時雨にとって大切な存在じゃなかったってこと?
あーあ、楓はカタキを愛し、カタキが真実を知った瞬間カタキに憎まれる。
そして最終的に、私の元に帰ってくる。
最ッ高の絵が見れると思ったのに…
「まぁ、いい。
想定外の“筏井 楓”も消すことができたし、C-14082も戻ってきた。
あとはラボに戻ってC-14082のロックを外すだけ…」
そのとき。
ザザッ────…
耳に付けていたイヤホンから、彼らの声が聞こえてくる。
《これで三日目だぞ!?》
《落ち着けよ、時雨。》
《落ち着いてなんかいらんねぇよ!!
楓が三日間も行方不明なんだぞ?!》
《島田にさらわれたか?》
《いや、楓チャンが飛び出してからオレたちが後を追うまでの短時間で、島田に楓チャンを倒せるとは思えない。
なんせカズサがついてんだよ?
そんな簡単に倒せるわけないって。》
《それでも楓は消えた。
カズサでも、勝てなかったってことか。》
《手掛かりもない、勝てる見込みもない。
どうすりゃいいんだよ…!》
馬鹿どもが。
まぁいい、これでこの茶番も仕舞いだ──
《…いや、手掛かりならある。》
《このところ、見かけないと思わないか?》
《あ?
誰をだよ、はっきり言え。》
《…前も楓に接触してきただろ。》
《だからはっきり言えって!!》
《頭を使え。
焦るな。
焦って答えを見誤るな。》
…………。
《…なるほど、黒斬、か。》
きた、きたきたきたきたァ!!
《さすが時雨だな。》
《確かに、ヤツら楓を欲しがってた。》
《それだけじゃない、『楓をうまく使う』とも言ってた。》
《…!
楓が危ない、今すぐ黒斬の場所の特定を…!》
《…………ッ駄目だ、ガードが堅すぎて…!》
《…っクソ!!!
何か手はないのか…!?》
ク、ククッ…
東雲時雨、やはり面白い…!
「ようやく気付いたね。
これは私からのご褒美だよ。」
私はスマホ画面をいじって、この場所の位置情報に眠らせた傷だらけの楓の写真を添付し、彼らが今使っているであろうパソコンに転送した。
《………!?………、……………》
イヤホンをはずし、その場に落とす。
盗聴器の受信機も同時に。
さぁ、来るがいい東雲時雨!
私を、もっと楽しませてくれよ…?
「クッ…クク、クハッ、
アハハハハハハハハハハハハ!!!!」