時雨「とにかく、だ。
楓、オマエは俺が守る。」
介「あれぇ、オレらもいるんですけどー」
時雨「…俺“達”で守る。」
言い直しに、櫻田さんのお兄さんがクスクスと笑う。
そんな中、1人呆然としているあたしは、さっきの東雲さんの言葉が頭をぐるぐると回っていた。
『俺はオマエの声、結構好きなんだけど。』
「~~~~~~~~~~~~ッッ///////////」
介「あらあら、かわいらし。」
櫻田さんのお兄さんが、おばさんのような口調で言う。
誠「真っ赤だこと。」
櫻田さんの弟さん、やっぱり兄弟なんだなって言わざるをえない。
「とととととととにかく!!!!!!
そんなんで誤魔化されませんからっ!!///////」
時雨「誤魔化す…って、そんなつもりじゃねぇんだけどな。」
介「この、天然タラシ魔め。」
誠「介にぃ、それには俺も同感だよ。」
陸「言ってる意味がさっぱり分からん。」
時雨「俺にもわかんねぇ…」
霧矢「…。」
改めて、黒田さんって無口だな………あれ?
もしかして、寝てます?
「黒田さんって…もしかして、寝てません?」
時雨「…あ、ホントだ。
まったく、こいつは興味ないとどこでも寝るんだから…。」
立ちながら?
立ちながら寝ることって人間にできたんですか!?
まぁ今目の前で披露されてますけども!!
雲龍って、こんなくだらない(必要ない)スキルばっかり磨いてるんですか!?
それともそういう集団の集まりなんですか!?
一体雲龍ってなんなんですか!?
時雨「ったく、強情張ってねぇで一緒にこいよ。」
「だから、必要ないって…!」
ドクンッ
“いいじゃない、守られてあげましょうよ。”
…そういえば、今朝薬飲んだっけ?
“飲んでないからこうなってるんでしょ?”
最悪だ…。
“いいじゃない、守られていれば。
そのうち私が、内側からじわじわと崩してあげるわよ。”
それだけは絶対にだめ…!
《そんなこと、させるもんか!!》
“まぁ、断るにしろ受けるにしろ、私はどちらでもいいけどね。
受けたら雲龍…だったかしら、彼らが傷つき、断れば蜥蜴…島田瑛が傷つくだけ。
どちらにしろ私は、楽しめるってことよ。”
そんな…!
“だったら守られていた方が、傷つく人は少ないんじゃないかしら。
そう思っただけよ。”
…え?
《なんでそんなこと、教えてくれるの…?》
“そうでもしなきゃ、張り合いがないもの。
アナタ弱いし。”
その言葉に、あたしは唇をかんだ。
“♪Is it all right for me to be here?
I not must exist.♪”
軽快なリズムに乗って、カズサは歌っていく。
その歌が、あたしの心を引き裂いていく。
《いや…い、や…嫌だ…やめてぇぇっ!!!!!!!!!」
心の中で呟いていたつもりが、いつの間にか頭を抱え、しゃがんだ状態で、口に出していたらしい。
我に返りハッと上を向く。
すると、驚いた顔でこちらを見つめる東雲さんと、
櫻田さんの弟さんに詰め寄る黒田さんと、
不思議そうに、首をひねる櫻田さんのお兄さんと、
無表情で立っている海原さんが目に入った。
霧矢「お前ら、何をした…!?
俺の過去を知ってて、女に手を出したのか…!?
いくら仲間だからって、それは…ッ!!」
誠「落ち着いて、霧矢。
俺達はなにもしていない。
筏井さんが勝手に怖がっただけだよ。」
黒田さん、いつのまに起きたんだろう。
時雨「悪ぃ、そんなに嫌だったとか、知らなくて…
きっと、楓にも事情があるんだよな。
ごめん、無理に言って…。」
東雲さんは、悔しそうに顔を歪めた。
そのとき、カズサの言葉が頭をよぎる。
“だったら守られていた方が、傷つく人は少ないんじゃないかしら。”
「あの…!!」
時雨「なに?
もう関わんないから、これからは普通に…」
「やっぱり、その…
守ってもらえませんか?」