「無理…ですよ。
あたし時雨君と話すことなんてありません。」

時雨「俺にもねぇよ?」

…え。

「話があってきたんじゃ…」

時雨「一緒に学校行こーかなーって思っただけ。」

それ、だけ?
じゃあ昨日は何もなかったって事…?

時雨「ああそうそう、昨日のことなんだけどさ、」

…来た。
ここであたしが聞いてしまったら、あたしは答えなきゃいけなくなる。

聞きたくない、時雨君に嫌われる言葉なんて…言いたくないよ。

「嫌!
あたしなんにも知りません、何にも答えません!!

時雨君に嫌われたくなんかない。
今はまだ…。

あたし時雨君が好きなんです、もうほっといてください!!」













…え?







っあ、あたしなに言って…、


カァァァァアア

顔が熱くなっていくのを感じながら、あたしはみんなを押し退けて外へ飛び出した。




どうしよう、言っちゃった…!

言っちゃったよ、勢いで言っちゃったよ!!

無我夢中で走った。

その結果。


「あれ…ここ、どこ?」

…まあ当然ダヨネ。


どうしよう、あたし迷子になっちゃった。


「どうやって帰ろう…」

「どーしーたのっ?♪」

声のする方を見ると、この間の…ええっと…

ええっ、と…


「こ…こ、こ…こけこっこ?」

「“黒斬よ(だよ)!!”」

わあお男の人とカズサのハモりピッタリ♪

ってボケてる場合か!




「な、なんですか…」

「今日はオトモダチ、いないのー?」

「あ、あの…」

「“楓”なんて名前、誰から貰ったのかなぁー?♪」

誰から貰った?
そんなのお父さんとお母さんから…

「まさか本当に両親から貰ったと思ってるわけ?

アハハハハハハハ!!!

両親の記憶ないくせに!!」

「…っ?!
なんでそれを…?!」

「なんで?
なめて貰っちゃ困るよ~!

こう見えても裏社会に通じた人間だよ?
そりゃいろいろ情報が入ってくるのは当たり前でしょ~♪」

ダメだ。

この人に関わったら、あたしは壊れてしまう。

本能がそう叫んでる。


「いや…」

「嫌って言われてもねぇ~。
このタイミング逃すわけにはいかないし?
そもそも通学途中に拉致る予定だったし?

お仲間がいないならやりやすいし、どう考えても見逃す理由ありまっせーん♪」


怖い。

怖いよ時雨君。


助けて───────…!