時雨「それじゃ、本題に入るぞ。」
全員がソファーに座ったところで、東雲さんが声をかけた。
その声で、あたしは構える。
こんなに改まってなにを言われるのか。
時雨「なぁ、まず名前教えてくんねぇ?」
名前かいっ!!!!!!!!!
「筏井 楓です…」
身構えて損した…。
時雨「年は?」
「16歳です。」
時雨「どこの学校に通ってる?」
陸「時雨、この制服は確か、同じ高校だぞ。」
介「え~、そうだっけ?」
東雲さんの質問に、海原さん、櫻田さんのお兄さんと、順々に発言していった。
…なるほど、ほとんど学校に来ないから、女子の制服も覚えていない、と。
時雨「…そういや、こんなの着てた気がすんな。」
オイオイ…
総長大丈夫なのか!?
こんなんでやっていけるのか!?
時雨「…同じ高校か。
それなら都合がいい。」
…へ?
なんの都合ですかぃ?
時雨「楓、明日から…「ちょっと待ったぁ!!!!!」
あたしは東雲さんの言葉を遮った。
だって、だって…
とてつもなく嫌な予感がするんだもの。
「フゥー…すみません、心の準備してました。」
時雨「なんで準備が必要なんだ?」
「いろいろこっちにもあるんですよ…」
ハハ、と苦笑いで返す。
そして、東雲さんはあたしに電撃を与えるほどの落雷を、いとも簡単に落としたのだ。
時雨「楓、明日から俺達と共に行動しろ。」
はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!!!!!!!!?
…とは叫ばなかったけど。
たったさっき!!
ついさっきだよ!?
話聞いたら、もう関わんないって決めたのに!!
叫ばなかったあたしをほめてほしい。
時雨「ん?
なに口パクパクしてんだ?」
そらパクパクもするわ!!!!!
「なっ、なんで…!!!!?」
時雨「あー…
まず、楓は島田に目ぇつけられたから。」
しまだ…?
しまだってだれ?
首を傾げていると、あたしの隣に座っている櫻田さんの弟さんが教えてくれる。
誠「島田は、今朝筏井さんを地面に押しつけてた人だよ。」
あぁ…あの暴君的な人。
時雨「アイツは、全国No.2の蜥蜴(トカゲ)総長だ。
アソコの族は、クスリ…薬物とか、チャカ…っつっても分かんねぇか。
拳銃とかが出回ってんだよ。
そんなヤツらに楓は、まぁ、標的にされたわけだ。」
そっ、そんな…!
「ななな、なんでこんなことに~……?」
時雨「…悪ぃな、巻き込んじまって。
アイツ、楓のことを俺の知り合いだと思ってんだよ。」
し、知り合い!?
時雨「俺たちがなに言っても聞かないだろうし。
ってなわけで、俺達が蜥蜴を潰すまでの辛抱だから。」
し、辛抱だからって…!!
「…い、いいです…」
時雨「え?」
「守っていただかなくて結構ですっ!!」
ソファーから立ち上がり、勢いよく叫んだ。
すると、なぜかクスクスと笑い声が聞こえる。
音の発信源は、櫻田さんのお兄さんだった。
介「プッ…
ハッハッハ!!
時雨、フられてやーんのww
クッ…フ、ハハハハハハハハハハハッ!!!!!」
誠「介にぃ、そこは笑っちゃだめでしょ。」
陸「俺には介のツボがよく分からんのだが。」
誠「陸は分からなくていいの。」
陸「…誠、それは知識欲が他人より豊富にある俺への挑戦状か?」
誠「へぇ?
まぁオレの方が知ってることは多いけどね?」
バチバチッ
そんな音が聞こえてきそうなほど、櫻田さんの弟さんと海原さんの目は火花を散らしていた。
黒田さんは爆睡。
(もはやただの兄弟に見えてきた…)
あたしがそんなことを思っていると、東雲さんが言った。
時雨「どうして遠慮するんだ?」
どうしてって…
なんて説明すればいいんだろう。
暴走族とは関わりたくないから?
さっき関わらないと決めたばかりだから?
あたしの側にいると傷つけるから?
…駄目だ、理由になるものがない…。
「…あ、あたしっ!!
その…暴走族嫌いなのでっ!!
もう関わらないでください!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
結局良い感じのいいわけが思い浮かばず、あたしは倉庫を飛び出し、家まで走った。