タッタッタッ…



ガシッ



腕を捕まれる。

今朝のように。


「…ッ嫌!!!!!!」

霧矢「…ごめん、その」


その声に振り返ると、そこにいたのは黒田さんだった。


「…っあ、ご、ごめんなさい…」

霧矢「ごめん…怖かった、よな。」

「いえ、その…」



…どうして、追いかけてきてくれたんだろう。

普段無口な黒田さんの声を初めて聞いて、初めて表情を見て、その上追いかけてきてくれた。


なんだか…勘違いしそうで怖い。


霧矢「…とりあえず、皆のところに戻ってくれるか?

アイツらも、もういないだろうし…。」

「あ、はい…。」


なぜか気まずい雰囲気をまとって、あたしと黒田さんは雲龍の人達の所へ戻った。




「…。」


黒田さんのうしろを歩きながら、さっきの場所へ戻る。

そこには、雲龍の人たち以外いなかった。


誠「…あ、その…」


櫻田さんの弟さんが口を開いた。

しかし、お兄さんがそれを遮る。


介「ここでする話じゃねぇだろ。

…てことで、倉庫きてくんねぇ?」


…こういうところは、お兄さんだと思う。


『私の趣味のターゲットに入るってこと、忘れないでね?』

不意に、カズサの言葉が頭をよぎる。

そうだ、この人達は暴走族。


あたしのそばにいれば、必ず傷つけてしまう人達なんだ。


「分かりました。」

あたしは返事をすると同時に決めた。


話を聞いたら、もう二度とこの人達に関わらない、と。




…それにしても、『分かりました』なんて言っちゃったけど、何の話だろう。

ここで話せないとか言ってたくらいだし、結構重大な話なのかな。


大人しく雲龍の人たちについて行くと、大きな倉庫についた。


ガララ...と大きな音をたてて倉庫の扉が開く。


姫以外の女禁制の地に、姫以外が足を踏み入れたことによって、倉庫内のものすごい沢山の人達は、あたしをギラギラと睨んでいる。



こ、こわぁ…



ドクンッ

ドクンッ



さっきから、カズサがうるさい。

狩らせろ、狩らせろって叫んでる。


あたしは、薬を飲んで無理矢理押さえつけた。



それを見た東雲さんは、心配そうにあたしに声をかけた。


時雨「悪ぃ、なんか病気だったか?」

「いえ、大したことはないので…。」

時雨「そうか。」


あたしが二重人格ってことは、誰にも言っていない。

言ったところで受け入れてもらえるとも思わないし、受け入れてほしいとも思わない。



階段を上がって、ちょっとした部屋に入る。

中は結構広くて、思わず見渡してしまった。


「もっと汚いかと思ってた…」

割と綺麗で、清潔感が漂っている。


時雨「まぁ、誠が綺麗好きだからな。」

東雲さんが言う。

その言葉に、櫻田さんの弟さんは少し暗い顔になった気がした。