『審査員の誰もが一瞬ドキリとした、と声を揃えて言った。
こんなに儚く、美しく、優しい空気に包まれ微笑む女性に思わず胸の高鳴りを感じる。
そして、その微笑みに惹き付けられずにはいられない。
被写体との関係性は分からないが、この美しい瞬間を見事に切り取った撮影者もきっと、審査員同様彼女に惹かれた瞬間だったのではないだろうか。
その感情が伝わる写真だった。
出品タイトルは【微笑み】だが、私がタイトルを付けるなら、この写真は、【恋に落ちた瞬間】だ』



敬愛する写真家が付けたそのタイトルが、自分でも情けない程しっくりとくる。

ただ、彼女に迷惑をかけたくはない。

俺の気持ちを伝えるつもりもないし、今以上の何かを求めるつもりもない。


だけど、静かに想う位は構わないだろう。



そんな事を思いながら、黙々と箸を進めた。


食べ終えたらまずは、管理部に行き社内報に載せないでくれ、と頼まなくては。

なんて事を考えながら。






~end~