「どんな風に撮って貰ったのか、ファインダー越しにどう写ってるのか知るのも勉強ですもん!
絶対見せて貰いますからね!」

そう言い放った彼女は、くるりと背を向け食堂を出て行く。

困ったなぁ。

出来上がった定食を受け取り、人の波を掻き分けテーブルに付く。

入賞した作品を思い出すと、何だかどうしても照れ臭い気持ちになってしまう。

大賞に選ばれなかったから見せたくない、とかではない。
自分でも中々良い写真を撮れた、とは思った。
だけど。

あの写真は、出来れば俺を知る誰かには見せたくない。

コンクールの結果が載っていた公式サイトには、審査員特別賞と言うのが今回特別に設けられた事。
そして、その理由として、大賞には惜しくも届かなかったが、各審査員が個人的に強烈に惹かれた写真に特別に贈呈する賞、と説明が付けられていた。

その特別賞に俺の写真を選んでくれたのが、尊敬する写真家なのだが…


まさか、管理部部長はあの写真と文面まで見たのだろうか。

黙々と箸を進めていた手を止める。


―…それは、ちょっと、困る。


賞に選んだ作品に対する写真家のコメントを思い出して、俺は1人赤面してしまった。