「柘植さん!?」


あの撮影から2ヶ月位になるだろうか。
会社の食堂で、食券を買おうと並んでいたらばったりと潤ちゃんに出くわした。
お昼時の混雑している食堂内で、潤ちゃんはよく俺に気付いたなと思う。

嬉しそうな笑顔を浮かべ、人の波を潜り抜ける様に足早に駆け寄って来た。

「お久し振りですー!
仕事、忙しいみたいですね」

言いながら後ろを振り返り、きっと一緒に休憩してた女の子ー同期だろうーに、先に行ってて、と声を掛けた。

「出張が続いててね~
ここ数ヶ月会議と出張と報告書に追われてる。
潤ちゃん、もう食べ終わったの? 」

チラチラとこちらを見ながら出口へ向かう潤ちゃんの同期に目をやりながら言う。

「早めに休憩入ったんです。
これから社内報の打ち合わせなので」

列が進むのに合わせ、潤ちゃんも前に歩を進める。

「部長が言ってたんですけ、今回の社内報に柘植さんのコンクール入賞載せるって」

「…あー、何でバレたんだろう…有難いよーな迷惑なよーな」

苦笑してしまう。
そうだった。
彼女は管理部所属で、社内報担当だった。

「…入賞したの、知らなかったです。
教えてくれてもいーじゃないですか!」

拗ねた様に唇を尖らせながら、食券販売機の前に立ち、何を食べようかな、と悩む俺の腕をポン!と叩いた。


ドキッ、としてしまうのはもう、仕方がない。