『行かないで!』



そんな言葉、言えるはずもない



代わりに私は
『兄さん、きっと立派な武士になって迎えに来てね!』
そんな心にもない言葉を口にしていた



私は馬鹿だったんだ



あの時、『行かないで!』そんな短い言葉さえ言っていれば兄は今、ここにいたかもしれないというのに...





兄の死から四十九日、涙はもう出ない




悲しみの泉もついに枯れた




でも、逆に増えて行くものがある




それは...


【武久 慶殿】


あの軽薄な字の文。