祖母はそう言うと、立ち上がり隣の部屋に入っていった。
「えっ」
直哉は理解できず、顔をあげた。始めての場所でしかも、一人で出掛けろと。都会じゃあり得ないだろ!登下校や外に出掛けるでさえ、団体行動強いられているのに。
直哉が困惑しているのに、気付いた祖母は大丈夫だよとキッパリ言った。
「ここいらで、犯罪なんかないよ。もし道に迷ったら其処ら辺の家に上がってあたしの名前言えば、教えてくれるからさ、はい!」
はい、と渡されたのは、隣の部屋から持ってきた大きな鍔が着いた麦ワラ帽子だった。
「日は傾いて来たけど、まだ陽射しは強いだろうから、被って行きな、はいじゃ行ってらっしゃい」
麦ワラ帽子を被せると、半ば強引に追い出されてしまった。

外は陽射しがやや弱まり始め、涼しい風が熱くなった頬と首筋を撫でて行き、気持ちが良かった。
周りは、畑と田んぼ以外何もない砂利の一本道が走り、横に草むらが生い茂り、木造の電信柱が等間隔で立っていた。
空は青く、雲がゆっくりと色々な形に変化しながら流れている。
「・・・」
ふと学校の遠足の事を思いだした。けどあの時行った所はまだ周りに人がいたし、車も通っていた。