静かだなぁ、と直哉はふっと思った。
勿論、せみの鳴き声は耳に着くが、都会で聴く様な雑音は一切なく、まるで時間が止まってるのではないかと錯覚する程だった。
「なぁんにも無いだろ」
祖母が、お盆に漬物を乗せて直哉の正面に座った。
「いえ、閑でいいですよ」
「閑?はぁはは、面白い事を言うね」
直哉はフォローしたつもりが、祖母に思いっきり笑われた。
「子供が面白い事を言う!」
祖母は、持ってきた漬物を口に運びながら、直哉に笑い掛けた。
「はぁ」
直哉は気のない返事をすると、目線を祖母から外した。それは先ほどから、子供扱いする祖母に少し腹が立ったからだった。
直哉は、確かに年齢的には子供だが、母親が仕事ばかりで留守がちだったので、家事は一通り出来るし、殆どの事は一人でやってきていた、それに其なりに物事を解っているつもりだったから、バカにされている様な気がした。
「お昼は食べたのかい?」
うつ向いたままの直哉を気に止めず、祖母が声を掛けた。
「・・・はい、食べてきました」
直哉は目線を反らしたまま、答えた。
「そうかい、じゃ夕飯まで時間が有るからから、そこいらへんでも、散歩してきたらどうだい」