「お久しぶりです」
直哉は軽く会釈をすると、祖母に思いっきり笑わやれた。
「なんだい、他人行儀だね」
はぁ、と直哉は苦笑いしながらも愛想をついた。
そりゃそうだ、祖母に会ったのは、本当に小さい頃で記憶が無いのだから他人の様なものだと、内心思いながらバレない様にため息をついた。
「そんじゃ、俺はこれで帰るよ」
クマじぃは、荷台に乗せていた荷物を家の中に運び終ると、車に乗り込んだ。
「あぁ、助かったよどうも」
「ありがとうございました」
「おう、じゃまたな」
クマじぃは、軽く片手を上げて挨拶し、車を走らせた。
「じゃ、入んな」
手招きををされ、直哉は後ろを着いていった。

家の中は、襖で仕切られていている平屋で、庭に面して戸が全開で、そこから心地よい風が家の中を通って行く。
座布団の上に正座をし、直哉は外に目をやった。
外はまだ陽射しがあり、地面に色濃い影を落とし、日陰には、何羽かのニワトリが座り込み、車も人の声も聞こえず、せみの鳴き声だけが響く中に、時折ニワトリが鳴いていた。
風が吹くと、縁側に吊してある風鈴が、涼しげな音色をたて、グラスに注がれた麦茶の中の氷が、カランと音を発てた。